2024 兵庫ウインターカップ レポート
2024年2月8日(木)
2月の姫路競馬は3週連続で重賞レースが組まれている。第1弾は古馬の全国交流重賞の第8回兵庫ウインターカップ(1400m)。舞台を姫路に移して4年目となる。
前年は地元兵庫の快速牝馬パールプレミアが久々の重賞タイトルを獲得。遠征馬の追い上げを封じる見事な逃げ切りだった。
今年は遠征馬5頭(川崎3頭、佐賀2頭)に地元勢7頭のフルゲートで争う。
混戦ムードが漂う一戦。時間によって人気順が入れ替っていたが最終的に上位5頭が単勝10倍以下のオッズとなった。
1番人気は佐賀から遠征のリーチ(単勝3.1倍)。道営時代に重賞2勝(イノセントカップ、鎌倉記念)。ラッキードリームと戦った道営三冠競走は2、2、3着と奮闘した。以降は船橋、高知、門別と渡り去年12月に佐賀へ移籍。1月のゴールドスプリントは9番手追走から豪快に差し切って約3年ぶりのタイトルを獲得。弾みをつけて姫路へ殴り込む。
2番人気(単勝3.7倍)は地元兵庫のタイガーインディ。前回の兵庫ゴールドトロフィーは自分の競馬に持ち込めず9着に終わったが、2走前は好時計をマークして圧勝。去年の摂津盃、姫山菊花賞は道中で絡まれながらも2、3着と粘った先行力がある。スムーズな競馬で念願の重賞タイトルを狙う。
3番人気は3.8倍で川崎のベストマッチョ。去年の勝ち鞍は地元オープンの1勝のみだが、重賞で2着2回、3着2回と善戦。年が明けて11歳となったが力の衰えはない。兵庫ウインターカップは一昨年2着、昨年は7着。地方競馬全場重賞制覇(ばんえい除く)が懸かる吉原寛人騎手とのタッグで3度目の正直なるか?
佐賀移籍初戦のテイエムサウスダンが4番人気の7.3倍。中央時代は短距離のダートグレード競走を5勝。2022年のフェブラリーステークス(G1)で2着に入るなど実績面ではNo.1。園田では2019年に兵庫ジュニアグランプリ、2021年に兵庫ゴールドトロフィーを制覇している。去年11月に佐賀へ移籍。今年JBC競走が行われる新天地で再起を誓う。
兵庫のオーバーディリバーが5番人気の8.9倍。昨年覇者の兵庫パールプレミアが6番人気、一昨年優勝の川崎インペリシャブルが7番人気で続いた。
出走馬
レース
スタート
スタンド前
ゴール板前~1コーナー
2コーナー
向正面
向正面~3コーナー
3~4コーナー
最後の直線①
最後の直線②
最後の直線③
最後の直線④
ゴールイン
姫路4週目は開催前に雨が降った影響で馬場状態「重」でスタート。水曜日には5R発走直前から再び雨に見舞われる。回復しかけていた馬場が再び水分をたっぷり含んだ馬場に逆戻り。重賞当日は「やや重」に回復したが力を要する馬場コンディションに変わりはない。
曇り空の姫路に重賞ファンファーレが鳴り響く。順調な枠入りでゲートが開いた。
発馬はエイシンヌプリが出負け。内から好スタートを決めたパールプレミアが今年もハナを奪う。その後は川崎勢が続く。外からベストマッチョ、インペリシャブル。内からイモータルスモークが二の脚速く好位追走。一列後ろにタイガーインディと休み明けのオーバーディリバー。中団にはバーニングぺスカ、テイエムサウスダン、リーチは後ろから4頭目からとなる。後方追走はタガノプレトリア、エイシンヌプリ。フーズサイドは1頭大きく離されての最後方で1コーナーを通過する。
逃げるパールプレミアが速い流れを作り馬群全長20馬身ぐらいで向こう正面に入る。バックストレートに入るとベストマッチョがパールプレミアとの差を詰めプレッシャーをかける。同じ川崎勢のイモータルスモーク、インペリシャブルが後ろを固めるが、5番手追走のタイガーインディが外から持ったままで浮上を開始。内にはオーバーディリバー、直後にテイエムサウスダンが続く。先頭から8馬身後方にいたリーチも早めにスパートを開始して勝負どころを迎える。
3コーナーでパールプレミアが後退するとベストマッチョが先頭に躍り出る。しかし、外から抜群の手応えでタイガーインディが並び2頭併走となり、そこから3馬身差の3番手は大集団。イモータルスモーク、インペリシャブル、テイエムサウスダン、内で踏ん張るパールプレミア、オーバーディリバー、直後に大外をまわすリーチ、バーニングぺスカ、タガノプレトリアと続く。
4コーナーでタイガーインディがベストマッチョよりも頭ひとつ前に出る。最後の直線コースに入るとタイガーインディはさらに加速。ベストマッチョとの差を広げていく。競り落とされたベストマッチョは一杯になりながらも懸命に粘る。3番手集団からは大外を豪快にまわしたリーチが抜け出してくる。前走同様に鋭い末脚を繰り出し残り100m過ぎで2番手に浮上。馬群を捌いてきたオーバーディリバーも直線伸びて2着争いに加わるが、タイガーインディの背中は遠かった。
後続に5馬身差をつけた地元のタイガーインディが勝利。去年の悔しさを晴らす圧勝だった。
2着は後方待機から鋭い決め手を披露した佐賀のリーチ。勝ち馬とは離されたが力は示した。
3着には地元のオーバーディリバーが入った。勝負どころでポジションを下げながらも、馬群を捌いて追い上げゴール寸前でベストマッチョを捕らえた。
実績最上位のテイエムサウスダンは伸びを欠き6着。連覇を目指したパールプレミアは11着だった。
◆タイガーインディはシニスターミニスター産駒の7歳牡馬。通算6度目の重賞出走で重賞初制覇。(JRA時代含む)
獲得タイトル
2024 兵庫ウインターカップ
◆広瀬航騎手は2022年の金沢スプリントカップ(ハナブサ)以来の重賞制覇。地元の重賞はガリバーストームで勝利した2021年の園田ジュニアカップ以来の勝利。重賞は通算4勝目。兵庫ウインターカップは初制覇。
◆保利良平厩舎は重賞5勝目。エコロクラージュで制した2022年楠賞以来の重賞勝利。兵庫ウインターカップは初制覇。
◆広瀬航騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
兵庫に来てからは逃げる競馬で結果を残していたタイガーインディ。前走同様、好位からの競馬となったが広瀬騎手は落ち着いていた。
「もう少し前につけたかったのですが、バタバタしても仕方ないので思い切っていきました」。位置取りは想定よりも後ろだったがタイガーインディは気分良くレースを進めた。
砂を被らない外々をまわりながら向正面に入ると徐々に先行勢との差を縮めた。「向正面で外へ出したときにガツンと来たのでこれは良いかなと思いました」
2走前に好時計で圧勝した時のような感触で勝負どころを迎えると勢いそのままに前へと押し上げていった。
「少し動き出すのが早かったかなと思いましたが、馬が強く勝ってくれました」とレースを振り返った。
スムーズに気分良く競馬が出来れば力を発揮するタイガーインディ。
「これから大きい所を狙っていける馬だと思います」と広瀬騎手も将来を期待している。
広瀬航騎手は去年が年間142勝で兵庫リーディング4位。3年連続で年間100勝を達成している。今年も出だしから好調で2月8日終了時点で年間25勝。そのうち姫路で20勝を挙げ吉村騎手、下原騎手を抑えて姫路リーディングトップを走る。節目の地方通算1000勝も見えてきた。
「何も変わらず毎日仕事しているだけですよ。その成果が結果に出てくれたらいいですね」
広瀬騎手は来月で40歳を迎えるが若手騎手と同じように早朝から調教に跨る。馬場が閉まる時間ギリギリまで乗っている事も多い。下積み時代からの積み重ねが近年、結果となって表れている。
広瀬騎手はタイガーインディ以外にも2年ぶりに戻ってきたガリバーストーム、ハナブサ、ドンフクリンなど重賞を狙えるお手馬が多いだけに重賞勝利数もさらに増加することも予想される。
長らく君臨する兵庫トップ3(吉村、下原、田中)の牙城を遅咲きの苦労人が崩すのか?注目していただきたい。
総評
「ゴールドトロフィーを使った後はオーナー牧場へ戻しました。引き続き調整してもらっていましたが良い状態だったので、兵庫ウインターカップを使う事に決めました」
揉まれるレースの後もダメージなく過ごしたタイガーインディは冬の姫路に照準を合わせてきた。
「2走前の圧勝したレースにこだわり過ぎた感じがありました。広瀬君と話をして自分のペースで行けるのであれば控える競馬をさせようかという事になりました。自分の競馬が出来て勝負どころで動ける位置ならどこからでも良かったです」
気分良く駆け抜けたタイガーインディは本来の能力を発揮。これまでの憂さを晴らす内容で圧勝した。
思います」
冬の姫路で一皮むけた兵庫の虎は新装された春の大一番を標的としている。
ダート路線改革の影響で全国各地で重賞競走の開催時期、条件変更が実施された。兵庫県競馬もその流れに続き重賞レースの変革が行われた。伝統の中距離重賞として行われてきた兵庫大賞典が今年から距離が1400mに変更。兵庫県競馬、春の短距離No.1決定戦という位置付けになる。
これまで兵庫は兵庫ウインターカップ(2月)の後は9月の園田チャレンジカップまで1400m重賞がなく、短距離馬達は重賞を求めて他地区へ遠征していた。スピードタイプの馬達が活躍する場が増加することは嬉しいことだ。
同時にその出走枠を争う戦いが始まっている。今回、補欠に泣いたドンフクリン、ケンジーフェイス。さらに重賞勝ち馬のサンロアノーク、ハナブサ、コウエイアンカなど短距離路線の層は厚い。大一番への出走には賞金加算が必須だ。今後はA1クラスの戦いがさらに激しくなる。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一