2024 のじぎく賞 レポート
2024年05月09日(木)
グランダムジャパン2024の3歳シーズン(全国交流)のセミファイナル第6戦。
今年は第5戦終了時点で、1位タイのグラインドアウト(高知)をはじめ、ニジイロハーピー(名古屋)、ザオ(船橋)、ファーマティアーズ(大井)と、ポイント上位馬が集結。
加えて、もう1頭の遠征馬であるバラライカ(門別)もここまで重賞で2、3着と堅実な走りを見せる。
一方の地元兵庫勢もここまで重賞で善戦、初タイトル狙う馬たちが出走。
シリーズ優勝を視野に、門別、船橋、大井、名古屋、高知からそれぞれ1頭ずつの遠征馬に加え、地元馬7頭のフルゲート12頭が覇を競った。
単勝人気は上位5頭までが単勝10倍以下と上位拮抗、その中でも重賞ウィナーにしてシリーズ勝利馬の2頭が高い支持を集めた。
単勝3.4倍の1番人気となったのは高知のグラインドアウト。
デビュー以降、地元戦ではプリフロオールインやワンウォリアーら地元の強力馬の後塵を拝する悔しいレースが続いたが、直近2走の佐賀遠征では花吹雪賞、グランダム第2戦のル・プランタン賞と重賞を連勝。
この時点で川崎のエレノーラと15ポイントで並ぶトップタイ。三たび遠征先で重賞Vを決め、シリーズ優勝に向けて前進を見込む。
差のない2番人気3.5倍に名古屋のニジイロハーピーが続く。
こちらも地元ではミトノユニヴァースやミトノウォリアーといった強力牡馬が立ちはだかり、なかなかタイトルに手が届かなかったが、1月の姫路遠征で兵庫クイーンセレクションを勝ち、重賞初制覇。
前走、グランダム第3戦の東海クイーンカップ(名古屋)も2番手から早め楽に抜け出しての勝利で、重賞2勝目。こちらもシリーズでポイント上位、今度は初の園田で重賞連勝を狙う。
3番人気は地元兵庫のプリムロゼで単勝6.2倍。
前走、初の遠征となった東海クイーンカップは大外枠が響き、終始外々を回る厳しい競馬。それでも最後は脚を見せて5着と掲示板は確保した。
デビュー直後は体質が弱く、あまり強い調教ができなかったが、「ここ半年の間でも筋肉や内臓を含めて身体が強くなっていて、入厩当初と比べれば別馬のようだ」と、雑賀調教師はその成長について話していた。地元戦で巻き返しを狙う。
4番人気はモンゲーギフトで単勝7.4倍。
デビュー後は圧勝続きの3連勝。ここ2戦は一戦級の牡馬の壁に阻まれ、3着、5着。しかしそのうち5着は兵庫三冠の菊水賞となれば仕方がないところか。
レースにおいてやや前向きさに欠ける面も、前走は見られず、レースの幅が広がった。あとは勝負所で少し反応が鈍くなる面を克服し、才能通りの力を見せられるか。
5番人気の9.2倍が門別のバラライカ。まだ1勝馬ではありながら、金沢のシンデレラカップで2着、笠松のラブミーチャン記念で3着とアウェーでも善戦。
久々の地元戦となった前走の鳥待月特別では、1200m戦のスタートで致命的な出遅れ。しかしそこから猛然と追い上げ、最後は勝ち馬のコモリリーガルから2馬身半差の2着。負けはしたが、今後が楽しみになる末脚を見せた。
遠征もすでに経験済み、グランダムシリーズ初参戦で存在感を見せるか。
以下、6番人気の単勝10.6倍が東海クイーンカップ2着、船橋のザオ。
地元重賞で善戦を見せるトウケイカッタローが7番人気11.4倍、8番人気18.1倍で佐賀フォーマルハウト賞の勝ち馬、大井のファーマティアーズが続いた。
出走馬
レース
スタート
1周目3~4コーナー
1周目スタンド前
2コーナー〜向正面
2周目3コーナー
2周目3~4コーナー
4コーナー~最後の直線
最後の直線①
最後の直線②
最後の直線③
最後の直線④
最後の直線⑤
ゴールイン
この日は好天に恵まれ、朝はやや渋っていた馬場も4レースから良に回復した。ただ、レース発走直前、実況席は16時現在で19℃。ここのところ続いていた初夏の陽気から一転、前日とこの日は、西風が冷たく、体感的には気温計の数字よりも肌寒い1日だった。
スタートは、船橋のザオ、門別のバラライカがやや後手。前の争いは廣瀬騎手が押してクライムエンジェルが先手を主張、その背後にプリムロゼがぴたりと付けて2番手。地元馬2頭が隊列を引っ張る形で1周目の3コーナーへ。
3番手は2馬身空けて高知のグラインドアウト、モンゲーギフトが続き、この間に後方からバラライカが巻き返して5番手の外へと上がる。
名古屋のニジイロハーピーはスタートでダッシュがつかず、その内の中団ポジションでレースを進める。
インタールード、メロディメーカー、ティラミスアイと地元勢が後方集団を形成。さらに後ろに大井のファーマティアーズ、ザオが差がなく追走、最後方に金沢の吉原騎手騎乗のトウケイカッタローが続いてスタンド前に入る。
先頭のクライムエンジェルはホームストレートで少しペースを落としたようにも見えたが、それでも馬群全長13馬身ぐらいでやや縦長。淀みない流れで2コーナーから向正面へと向かっていく。
2コーナーあたりから3番手のバラライカ、大山真吾騎手が動き出し、前2頭との差を詰めると、それに応戦するように、2番手のプリムロゼ、先頭のクライムエンジェルも促して、全体的にペースアップ。
前の3頭から遅れること4馬身差の4番手にグラインドアウトが続き、モンゲーギフト、ニジイロハーピーの2頭は鞭を振るって追走、インタールード、メロディメーカー、ティラミスアイが変わらず後方を形成し、ファーマティアーズ、ザオの遠征馬2頭もなかなか位置を上げられない。トウケイカッタローが変わらず最後方の展開、馬群は20馬身に伸びて3、4コーナーへ。
ここで苦しくなったクライムエンジェルが後退すると、前はプリムロゼとバラライカの2頭が競り合って4コーナーに向かう。
グラインドアウトが離れた3番手からこれを追い、さらに外に切り替えたニジイロハーピー、モンゲーギフト、メロディメーカーが差を詰めて直線へ。
振り切りにかかるプリムロゼ、追いすがるバラライカ、3馬身差でこれらを追うグラインドアウトとニジイロハーピー、前4頭の攻防となり、残り100m。
プリムロゼとバラライカの熾烈な追い比べが続く中、猛然と追い込んできたニジイロハーピーが、ゴール目前、前の2頭を鮮やかに差し切ってゴールイン。
直線、外に切り替えてからの伸びが目立ったニジイロハーピー。結局2着のバラライカに半馬身差をつける快勝だった。
終わってみれば名古屋、門別の遠征馬2頭によるワンツーフィニッシュ。
3着には厳しい流れでもよく粘った地元兵庫最先着のプリムロゼ。
4着には直線伸び切れなかった高知のグラインドアウト、そして最後方からただ1頭、上がり3ハロン40秒を切る38.9秒の末脚を繰り出したトウケイカッタローが5着に入った。
◆ニジイロハーピーは、前走の東海クイーンカップに続いてグランダムシリーズジャパン3歳シーズン2連勝で重賞3勝目。この時点で10ポイント加算して20ポイントとなり、今回4着で5ポイント加算した高知グラインドアウトとトップで並んだ。
兵庫重賞は今年1月の兵庫クイーンセレクション(姫路)に続いて2勝目。園田では初出走初勝利となった。
獲得タイトル
2024 兵庫クイーンセレクション
2024 東海クイーンカップ(名古屋)
2024 のじぎく賞
◆大畑雅章騎手(名古屋)の兵庫重賞制覇は2017年の六甲盃(カツゲキキトキト)以来で2勝目。
◆今津勝之厩舎は、このニジイロハーピーで制した1月の兵庫クイーンセレクション以来の兵庫重賞3勝目。
園田では2008年園田ユースカップ(サチコゴージャス)以来の重賞勝利となった。
◆大畑雅章騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
ゴール前で鮮やかな差し切りを決めたニジイロハーピーと大畑騎手だったが、その鞍上は、勝利インタビューで「ちょっとドキドキしていました」と苦笑い。
いつもよりも後ろのポジションになった位置取りについては「出たら行こうと思ったんですけど出なかった。(想定よりも)1つ後ろのポジションになったので、そこは困ったポイントでした」と振り返った。
「道中最低でしたね、乗り方は。最後勝ったのは馬のおかげというか、馬の力に助けられたようなものです」と天を仰いで反省しきりの大畑騎手。
2コーナーすぎからずっと追っつけての追走で、感触も怪しかったようだが、外に出してからは「差し切るな」という手応えに変わったという。
「なかなか掴みどころのない馬でいつも試行錯誤です」としながらも、「まだ伸びしろはあると思います。どんな競馬もできるところが強みです」とポテンシャルの高さ、将来性にも言及。
そして、2017年の六甲盃(カツゲキキトキト)以来となる7年ぶりの兵庫重賞制覇については、「(そのときのことは)覚えています。よその地で勝てたことはとても嬉しく思います」と、ここでは白い歯がこぼれた。
自身の騎乗について、悔しい思いを抱きながらも明るく対応してくれた大畑騎手。
とはいえ、4戦2勝、2着1回、うち重賞2勝と相性の良いコンビ。
今後の人馬に期待したい。
総評
1月の姫路に続く、兵庫重賞制覇については、
「馬場が合うんだね」と一言。
園田では2008年園田ユースカップ以来の重賞勝利となったことに水を向けると、「サチコゴージャスのときね。覚えているよ」と笑顔で答え、兵庫には良い印象があるといった様子だった。
これでニジイロハーピーはグランダムジャパン3歳シーズンにおいて、前述の通り、現時点で高知グラインドアウトとトップタイの20ポイント。
今後はグランダムシリーズ覇者を目指して、6月12日の関東オークス(川崎 Jpn2)に進むのか、それとも東海地区最高峰の舞台、5月29日の東海優駿(名古屋)に臨むのか、「馬の状態を見てから判断したい」と、ここでは明言を避けた今津調教師。
「重賞3勝もしているんだからもう充分頑張っているよね」と柔和な表情で語る師の言葉に人柄が表れているようにも感じた。
もはや兵庫勢にとっては天敵のような存在になっているが、その分ここをステップに今後の大舞台でも輝いてもらいたい。
そして、交流戦ではなんとも悔しい結果が続く地元勢の奮起にも期待したいところだ。
文:木村寿伸
写真:齋藤寿一