2024 ネクストスター園田 レポート

2024年10月24日(木)

去年新設された2歳重賞「ネクストスター園田」。未来優駿2024シリーズの一戦となっている。

9頭立てで実施された第1回はマミエミモモタローがクビ差制して初代王者に輝いた。同レース5着のマルカイグアスはその後、年末の園田ジュニアカップを勝利。3歳になると兵庫優駿、園田オータムトロフィーの二冠を獲得し、兵庫3歳世代のトップに君臨している。

ダート路線改革元年となった今年は、岩手のフジユージーン、大井のサントノーレ、高知のプリフロオールイン、シンメデージーなどが活躍し、各地でスターホースが誕生した。2022年生まれの新しい世代からどんな傑出馬が現れるのか期待が高まる。

今年のネクストスター園田には、兵庫ジュベナイルカップ、園田プリンセスカップで重賞を経験した馬に、JRA認定戦を勝って勢いのある馬など楽しみな顔触れが集結。フルゲート12頭で頂点が争われた。

オケマルが単勝1.4倍の1番人気となった。
デビューから2戦2勝。前走のアッパートライ競走は4番手追走から抜け出して後続に6馬身差をつける快勝。控える競馬でも結果を残し、ファンからの支持を集めた。能力検査からみせていた素質の片鱗を実戦でも発揮。去年のマミエミモモタローに続く無敗制覇を目指す。

単勝2番人気(5.7倍)は重賞勝ち馬のラピドフィオーレ。
兵庫ジュベナイルカップは早めに動いて4角で逃げるキミノハートを捕らえる強い内容。幼い面を残しながらも初タイトルを手に入れた。課題はあるが持ち前の能力、パワーを発揮して重賞連勝を狙う。

3番人気はキミノハートで単勝7.5倍。
これまで3戦1勝、2着2回とオール連対。兵庫ジュベナイルカップは速いラップで逃げたが最後まで渋とく粘って2着。レースを経験する毎に力をつけている牝馬に今回も吉村智洋騎手が跨る。恵まれた体格を武器に重賞制覇を目論む。

あとは単勝10倍台でウイングスオール、キングスピカと続く。2連勝式、3連勝式はオケマル、ラピドフィオーレの2頭を中心に人気を集めた。

出走馬

1番 ビーチボーイ 大柿一真騎手
2番 キミノハート 吉村智洋騎手
3番 ジーニアスレノン 広瀬航騎手
4番 ラピドフィオーレ (高)赤岡修次騎手
5番 オケマル 下原理騎手
6番 ウイングスオール 笹田知宏騎手
7番 キングスピカ 小牧太騎手
8番 エロイムエッサイム 松木大地騎手
9番 キミノカチドキ 鴨宮祥行騎手
10番 レイナボニータ 永井孝典騎手
11番 アップップ 竹村達也騎手
12番 イザグリーンライト 山本咲希到騎手

レース

スタート

スタンド前

ゴール板前

2コーナー~向正面

向正面~3コーナー

3~4コーナー

4コーナー~最後の直線

最後の直線①

最後の直線②

最後の直線③

最後の直線④

最後の直線⑤

ゴールイン

今年の「ネクストスター園田」当日は季節外れの暑さとなった。最高気温は25℃台と日中は汗ばむような陽気。そんな中、場内イベントも実施されてお祭りムードの中でメインの発走時刻を迎える。

枠入りはスムーズに進んだがキミノカチドキがゲートを突進して飛び出してしまう。しかし、数十メートル進んだところで止まりゲート地点へと戻った。キミノカチドキが最後入れで枠入り完了。スタートが切られた。

スタートは若干バラついたがオケマルは五分の発馬。ビーチボーイ、エロイムエッサイム、キミノカチドキ、イザグリーンライトの4頭が後方からとなる。先行争いは5~6頭が横に広がるがラピドフィオーレが先手を主張。積極策に出たウイングスオールが2番手。前回逃げたキミノハートはインの3番手につけた。オケマルは4番手を確保。差のない外にキングスピカが追走。中団にジーニアスレノン、アップップ、ビーチボーイが続く。後方にはレイナボニータ、イザグリーンライト、エロイムエッサイム、キミノカチドキの順で最初のコーナーに突入した。馬群全長は10馬身ぐらい。落ち着いたペースで12頭が2コーナーへと向かう。

今回は逃げの手に出たラピドフィオーレ。赤岡騎手が馬をなだめ絶妙なペース配分で向正面に入る。積極策のウイングスオール、キミノハートが直後を追走。外からキングスピカが4番手で続く。その内にいるオケマルは前走馬が蹴り上げた砂を嫌がる面をみせた。1発、2発と下原騎手の鞭が飛び、追うアクションも大きくなる。徐々にペースが上がると、3コーナー手前ではオケマルと先頭との差は5馬身ぐらいに広がった。直後にいた6番手のジーニアスレノンまでが先行集団を形成。そこから4馬身後方にいた6頭は固まっての追走。懸命に追いあげようとしたが前との差は詰まらない。

3コーナー付近からキングスピカが早めに動く。楽なペースで逃げるラピドフィオーレを捕まえようと2番手に浮上。好位のウイングスオール、キミノハートも粘るが外から良い勢いでオケマルが上がってきた。3~4コーナーあたりで外へと切り替えたオケマルはエンジンが掛かりぐんぐん加速。4コーナーで3番手に浮上するも先を行く2頭とはまだ4馬身差。先頭はラピドフィオーレ、キングスピカが併走で最後の直線に入る。ウイングスオール、キミノハートが脱落し、三つ巴の争いで残り200mを切った。

前は逃げ粘るラピドフィオーレ、外のキングスピカの鍔迫り合いが続く。赤岡騎手、小牧騎手の鞭が盛んに飛んだ。そこに馬場の真ん中を通ってオケマルが伸びてくる。残り100mで2馬身差に詰めると、全身を使ったダイナミックな走法で猛追。手に汗握るゴール前の攻防はオケマルが残り10mで前の2頭を捕らえた。デビューから無傷の3連勝で初重賞制覇。去年のマミエミモモタローに続いて無敗馬が勝利した。

2着は逃げる競馬で粘ったラピドフィオーレ。今回はスタートも決まり絶妙なペースに持ち込んだ。幼い面は残るが重賞舞台で1、2着と高いパフォーマンスを見せている。
重賞初出走のキングスピカは3着。中1週での参戦だったが、早めに逃げ馬を捕まえに行く強気の競馬で見せ場を作った。

6番手からじわじわ脚を伸ばしたジーニアスレノンは4着。2番手で競馬したウイングスオールが5着。3番人気のキミノハートは直線で力尽きて11着だった。

◆オケマルはニューイヤーズデイ産駒の牡馬。3戦3勝でネクストスター園田を勝利。去年のマミエミモモタローに続く無敗制覇となった。


獲得タイトル

2024 ネクストスター園田

◆下原理騎手は10月20日の佐賀オータムスプリントに続き今年重賞8勝目。通算重賞93勝目。大台の100勝まであと7つとした。

◆盛本信春厩舎は重賞9勝目。重賞勝利は2018年のクイーンカップ(笠松)をフセノランで勝って以来。地元兵庫の重賞は2016年の園田チャレンジカップをランドクイーンで制して以来の勝利。

◆下原理騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

「正直ホッとしました」と、これまで数々の重賞タイトルを獲得している下原理騎手が安堵の表情をみせた。

道中は4~5番手につけたオケマルだったが向正面で下原騎手のアクションが激しくなる場面があった。

「レースプランは考えずに出てから決めようと思っていました。ペースアップした時に砂をまともに被ったら嫌がって進みが悪くなりましたね。2歳戦なので理想通りにはいかないとは思っていました」

新馬戦、認定戦で強い競馬をした馬が、初めて揉まれたり砂を被ったりして力を出し切れない姿というのは、これまでも多くみられた。今回のオケマルも同様にポジションを下げて万事休すかと思われた。しかし、残り400mぐらいからの脚は一級品だった。

「どこかで外へ出したいと思っていたら4角手前でした。ハミを取ってくれたので届いてくれという感じでしたが、きっちり差し切ってくれましたね。能力は相当高いです。2歳のこの時期でこういう競馬から盛り返すのは中々出来ません」

高い素質と共に強い勝負根性を持つオケマルは苦しみながらも勝ち切った。「揉まれるレースに慣れてきたらもっと力を発揮してくれると思いますよ」と、さらなる成長を期待している。

レースを終えて検量前に戻ってくると担当厩務員が涙を流して愛馬を迎える。盛本調教師もホッとした表情で下原騎手と会話を交わすシーンがあった。

「最終追い切りに乗ろうと思ったのですが、担当厩務員が自分でやるとの事で万全に仕上げてもらいました。しっかり結果で応えることが出来て良かったです」と、良い状態で本番に送り込んでくれた陣営に感謝した。

厩舎サイドの勝利への執念が結果に結びつき、盛本厩舎は6年ぶりの重賞制覇を決めた。直後の最終レースも下原騎手、盛本厩舎のコンビで勝利して最高の1日を締めくくった。

下原理騎手は10月20日の佐賀オータムスプリント(重賞)をロードミッドナイトで逃げ切り勝利。遠征で勝って弾みをつけると4日後の地元重賞でも結果を残した。重賞通算93勝目。9月はサマーチャンピオン(佐賀)でダートグレード制覇を達成するなど今年だけで重賞8勝。大一番での勝負強さが光る。

「大台の100勝まであと7つと分かっているので頑張りたいです。園田ジュニアカップはまだ勝てていないレースなので獲りたいですね」

進化を続けるオケマルと共に大晦日決戦の園田ジュニアカップ制覇を目指す。その下原騎手は11月4日はJBC競走が行われる佐賀競馬場に遠征予定。去年、今年だけで佐賀の重賞を5勝とコースは熟知している。兵庫所属騎手初の交流G1制覇へ名手の手腕にご期待いただきたい。

今回のオケマルの勝ち時計1.31.6。去年の勝ち時計より1.3秒速いタイムとなった。ちなみに去年のマミエミモモタローは兵庫ジュベナイルカップで1.31.7。兵庫若駒賞で1.31.8というタイムで重賞を制覇している。

週により馬場傾向、走破タイムの出方も違う園田の馬場だが、この時期でこの時計は優秀だ。

新馬戦を勝った後は中1週でアッパートライ競走(JRA認定)に参戦。器用な立ち回りで勝って賞金加算に成功。重賞戦線へ名乗りを挙げた。

盛本調教師は「新馬だけの賞金だと(出走の)枠に入らなかった可能性があったので、あの勝利は大きかったです。厳しいローテーションでも頑張ってくれました。馬は違いますが、ウェラーマンが怪我で引退してしまって厩務員とは『とにかく無事に』と話をしていました。これまで慎重に育成を進めてきましたが、もっと良くなっていくと思います」と、兵庫優駿2着後に怪我で現役を退いた先輩馬のことを思いながら語ってくれた。

盛本厩舎に久々の重賞タイトルをプレゼントしたオケマル。次走からライバル達の厳しいマークを受けることになるが、苦難を乗り越えた経験は今後に繋がる。期待の素質馬がこれからどんな成長をみせてくれるのか期待したい。

総評

盛本調教師は、「ゴール前は叫びましたよ。危なかったのでね。ゴール寸前で変わったのが分かったので安心しました」と、ホッとした表情だった。「ヒヤッとしましたよ。前走でも砂を被ると嫌がる面をみせていましたが、今回も嫌がってエンジンが掛かるまでに時間を要しましたね。ただ、外に出てからこの馬の能力を発揮してくれて頑張ってくれました。この経験は今後の糧になりますよ」と、厳しい競馬で勝ち切った愛馬を労った。
今後については、「能力検査から凄い動きを披露していましたが馬はまだ成長途上です。馬なり程度の仕上げでこれだけ走りますからね。来月の兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)にも挑戦したいですけど将来もありますからね。『無事に』という事が一番なので一度放牧に出す予定です。距離は延びた方がいいですね。暮れの園田ジュニアカップを目標に仕上げていきたいです」と、大晦日の2歳決戦を視野に入れている。
オケマルを管理する盛本信春調教師は6年ぶりの重賞制覇。地元兵庫の重賞はランドクイーンで勝利した2016年の園田チャレンジカップ以来の勝利となった。「とにかく長かったですね。それまでは順調に勝てていたのですが・・・チャンスがある馬であと一歩というレースも多かったのでこの勝利は嬉しいです」と、久々の重賞勝利に笑顔がこぼれる。取材中には同じ西脇所属の調教師、関係者から祝福の言葉をかけられて検量前は祝福ムードとなった。


今年のネクストスター園田は今後さらなる成長が期待される素質馬が多く揃った一戦だったが、オケマルが強い内容で制した。しかし、ラピドフィオーレやキングスピカ、ジーニアスレノンといった馬達も能力を発揮してこの先が楽しみな内容だった。来月11/26(木)には地元で「第26回兵庫ジュニアグランプリ」(Jpn2 園田1400m)が実施される。兵庫の将来を担う若馬が大舞台に名乗りを上げ、全国の強豪に挑む姿を見てみたい。

兵庫の新馬戦は12月まで実施されるため、これから出てくる新星の登場にも期待したい。来年の兵庫三冠クラシックを目指す戦いはまだ始まったばかり。新進気鋭な2歳世代の戦いにご注目ください。


 文:鈴木セイヤ
撮影:斎藤寿一 

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