2023 ネクストスター園田 レポート

2023年10月12日(木)

昨年までの兵庫若駒賞に変わって、10月中旬に新設された2歳重賞「ネクストスター園田」。未来優駿2023シリーズの一戦だ。

中央を含めた3歳ダートレースの路線が整備されることになり、その一環で来年から兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)が1400mに短縮、3歳ダート界の短距離王決定戦に生まれ変わる。
そこに向けて、2歳秋に金沢・佐賀・盛岡・門別・笠松・園田・高知・名古屋でネクストスター競走が新設された。
3歳春には、ネクストスター東日本・中日本・西日本・北日本とブロック別のネクストスター競走も誕生する。

ダート新時代のスター候補生9頭が初代ネクストスターの座を狙って参戦した。

1番人気はマミエミモモタロー。単勝1.3倍の大きな支持を受けた。
デビューから3戦3勝。兵庫ジュベナイルカップ(以下兵庫JC)は好位インで砂を被る展開ながらも抜け出して勝利、そして兵庫若駒賞は逃げて7馬身差の完封劇。違う展開での重賞連勝で世代のライバルたちを一歩リード。

2番人気はクラウドノイズで、単勝4.5倍。
兵庫JCは、820mの新馬戦勝利から中1週ということもあり1400m仕様に馬がなっておらず3角で息切れして10着に敗れたが、その後1230m、1400mと距離を延ばして連勝。前走は1.31.1という好時計で逃げ切っており、マミエミとの再戦が注目された。

3番人気はトウケイカッタローで単勝9.0倍だった。
新馬戦、アッパートライと1400m戦で連勝した牝馬。スタートはそれほど速くないが、素晴らしい末脚が武器。陣営もその素質を高く評価しており、大事に育てじっくり成長を見守る過程での一戦となった。

さらに新馬戦勝利で1戦1勝のマルカイグアスが4番人気。兵庫JC4着、兵庫若駒賞2着と重賞で健闘が続いたスタビライザーが5番人気で続いた。

出走馬

1番  ダイジョバナイ 大山真吾騎手
2番 ヤシロボーイ 田野豊三騎手
3番 スタビライザー 竹村達也騎手
4番 タルナカンワル 廣瀬航騎手
5番 クラウドノイズ 下原理騎手
6番 メン 山本屋太三騎手
7番 トウケイカッタロー (高)赤岡修次騎手
8番 マミエミモモタロー 川原正一騎手
9番 マルカイグアス 田中学騎手

レース

スタート

スタンド前

スタンド前②

2コーナー~向正面

向正面中央

3コーナー

4コーナー

4コーナー~最後の直線

最後の直線①

最後の直線

最後の直線

最後の直線

最後の直線⑤

ゴールイン

全面の砂が入れ替えられて最初の週。特にその初日(水曜)は従来よりも時計のかかるレースが多く見られたが、ネクストスター当日(木曜)は幾分その傾向も緩和されているように感じられた。
10月に入ってようやく季節が進み、この日はレースの時間は気温24℃。爽やかな秋晴れの下レースは行われた。

スタートはバラバラ。有力馬ではマミエミモモタローとクラウドノイズは飛び出し良く前へ。一方、トウケイカッタローとマルカイグアスが出遅れて後方からとなってしまった。

まずはクラウドノイズがデビューから5戦連続の逃げに持ち込むと、ダイジョバナイがその外に切り替えて2番手。マミエミモモタローは3番手好位、内に入れず外を回る展開となった。その内側にスタビライザーが入って3番手は横並びで1コーナーを迎えた。

スタート出遅れたがそこからすかさずインに入れた赤岡騎手のトウケイカッタローが中団、タルナカンワル、メンと続いて、マルカイグアスは外を回りながら後方2番手、一頭だけ6馬身遅れてヤシロボーイ。

2コーナーでは一頭を除いて6馬身圏内に固まり、前半800m通過は52.5秒。兵庫JC(同 52.2秒)や兵庫若駒賞(同 52.7秒)と同じぐらいのラップでレースは進んだ。

向正面でペースは上がり始め、前を行くクラウドノイズとダイジョバナイがマミエミモモタローを3馬身近く離して3コーナーへ。後方ではマルカイグアスが外から4番手まで押し上げる一方、トウケイカッタローは反応が今一つ、6番手に下がり先頭との差も10馬身ほどに広がった。

4コーナーからスパートに入ったマミエミモモタローは一気に前2頭に並びかけて直線へ。残り100mで追い比べを制して先頭に立って快勝するかと思われた所に、大外からトウケイカッタローが強襲。残り100mではまだ5番手、マミエミとの差7馬身のところから一気に差を詰め、並びかけようとしたところがゴール。

なんとかクビ差だけ振り切ったマミエミモモタローは、デビューから無傷の4連勝(重賞3連勝)となった。
2着トウケイカッタローは3コーナーでもたついたことが悔やまれるが、直線の伸びは秀逸、今後に期待を抱かせる伸びだった。
3着はクラウドノイズ。直線の追い比べで一旦ダイジョバナイに前に出られながらも、最後アタマ差差し返した根性が光った。マルカイグアスはそのあとの5着で、6着以下は大差離れての入線。

◆マミエミモモタローは、4戦4勝でネクストスター園田を勝利。重賞3連勝となった。


獲得タイトル

2023 兵庫ジュベナイルカップ
2023 兵庫若駒賞
2023 ネクストスター園田

◆川原騎手は兵庫若駒賞に続き今年重賞3勝目。通算重賞119勝目。65歳6ヶ月28日での重賞制覇となり、国内における最年長重賞勝利記録をみたび自身で塗り替えた。

◆諏訪貴正厩舎は兵庫若駒賞に続き重賞4勝目。すべて川原騎手とのタッグで勝利。

◆川原正一騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

「ホッとしています。勝ててうれしいです」と、ここまで無敗、単勝1.3倍の圧倒的人気の中で勝利という結果を残せた安堵感を川原騎手は吐露。最後クビ差凌いでくれたマミエミモモタローに「頭が下がります」と賛辞を贈った。

兵庫JCは好位のインで我慢させながらの勝利、兵庫若駒賞は逃げ切りと異なる展開で連勝を伸ばしてきた中、今回は初めて外枠からのスタートとなった。

「2番手か3番手の位置になるだろうと思っていた」と想定通りのレース展開に持ち込めたが、手応えに関しては「いつもよりはちょっと物足りないなという感じ」で、ゴール前では「脚が上がってしまった」と振り返った。

8月末から1ヶ月半レース間隔が開いた分なのか、納得のパフォーマンスではなかったようだ。前走比+11kgの馬体も「調教も結構乗っていた」中でのもので「想定内」。「走らせてみないと分からないところがある」と普段から寄り添って調教を付けている川原騎手をでもまだ掴み切れていない部分はあるようだ。

ただ「まだまだこんなもんじゃないと思っています。この馬はまだこれから力つけてくると思うので、一息入れて次を目指したい」とさらなる成長を期待している。

管理する諏訪貴正調教師は、「レース前からクラウドノイズに残られるのが怖いと思っていたので、早く掴まえに行って欲しいなと思って道中見ていました。でも川原さんは後ろの馬も警戒しながらのレースでギリギリまで仕掛けを我慢していましたね。もし早目に前を掴まえに行っていたら負けてましたから、そこはさすが川原さんですね」と大ベテランの手腕を讃えていた。

今回の勝ち時計が1.32.9。兵庫JC(1.31.7)、兵庫若駒賞(1.31.8)と比べて1秒以上遅い時計に「ゴール前で脚が上がったし、ちょっと時計も物足りない」と振り返った。砂が入れ替わって時計の出方が変わっている可能性もあるが、最後にやや息切れしてしまったこともあり、思っていたほどのパフォーマンスではなかったようだ。

戦前は「成長で体が10kgほど増えている」というジャッジだったが、「終わってみると少しだけ余裕もあったのかもしれないですね」とのこと。それでも「勝てて良かったです」と胸を撫で下ろした。

総評

今後、「大晦日に行われる園田ジュニアカップの前に一度1700mを経験させたい」との思いから、マミエミモモタローは11/22(水)の兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)には向かわず、12月初旬の1700mアッパートライを目標に調整される。

それまで1ヶ月強を、名張にある岩崎ステーブルで過ごし、坂路調教を施しながら調整されるとのこと。
諏訪師は「ライバルもどんどん力を付けているのでマミエミも頑張らないと」とさらなる強化を目指す。
「無敗を続けることにはこだわっていません。あくまで年末の大きなタイトルを取るためにどうするか」を考えてステップを踏むという言葉が印象的だった。

川原騎手は「今日の走りからすると折り合いもついているんで、距離が延びても大丈夫だと思います」と期待を寄せている。
戦績だけ見れば4戦4勝のマミエミモモタロー一強に見える2歳戦線だが、ネクストスター園田の結果を見れば、ライバルたちも着実に力を付けている。

トウケイカッタローの末脚は重賞でも通用の器、スピードに磨きをかけてきたクラウドノイズは勝負根性も備えている。ダイジョバナイの安定した先行力と粘りも一線級の力を秘め、マルカイグアスはキャリア2戦目で出遅れて外をずっと回りながらのレースを思えば0.4秒差は立派なもの。

今は休養中の2戦2勝のコパノカサノバ、兵庫JC2着馬ミナックシアター、さらにJRAりんどう賞に挑戦し0.5秒差の6着に奮闘したフェリシスといった存在も忘れてはならない。

ここから兵庫ジュニアグランプリ(Jpn2)で強敵相手に経験を積む馬もいれば、1700mを予め経験した上で大一番に向かう馬もいる。
真の2歳王者は誰なのか、大晦日に行われる園田ジュニアカップも熱い戦いとなるに違いない。今からその時が楽しみだ。


 文:三宅きみひと
写真:齋藤寿一  

information