2025 兵庫クイーンセレクション レポート
2025年1月23日(木)
今年は合計7週、22日間で行われる冬の姫路競馬。開幕週の3日目に3歳牝馬限定の西日本交流重賞「兵庫クイーンセレクション」が行われた。今後に向けて弾みをつけたい若き乙女が集結。今年は遠征馬3頭、地元馬9頭のフルゲートで実施された。
1番人気は高知から遠征してきたドライブアウェイ(単勝1.6倍)。持ち前のスピードを駆使してネクストスター高知を無敗で制覇。前回の金の鞍賞はスタートで躓き後方からの競馬。道中も深い内に押し込められるなど、自分の走りができず初黒星を喫した。力を発揮した時の強さは圧巻だっただけにスタートを決めて2つ目のタイトルを狙う。
地元兵庫のチョッパスニーが2番人気(単勝4.5倍)。去年11月に初勝利から3連勝をマークすると、距離を延ばしたOPでもベラジオドリームにハナ差の2着と健闘。重賞は初挑戦だが近況の充実ぶりが評価された。鞍上に地方通算4600勝以上をマークしている高知の赤岡修次を迎え初タイトルを目指す。
笠松のプチプラージュが単勝5.9倍で続く。道営でデビューすると9月に金沢シンデレラカップで初重賞制覇。笠松移籍後は未勝利だが重賞で2、3、4着と堅実にまとめ、牡馬相手にも怯まない勝負根性をみせた。今回は牝馬限定の一戦。これまでの経験を姫路の舞台で披露できるか注目だ。このレース2戦2勝の渡邊竜也騎手とコンビ継続で挑む。
上位3頭が単勝10倍以下の人気。あとはセクシーキャット、キミノハート、フセノオーロラの順で続いた。
出走馬
レース
スタート直後
スタンド前
1~2コーナー
2コーナー
3コーナー手前
3〜4コーナー
4コーナー
最後の直線①
最後の直線②
最後の直線③
最後の直線④
ゴールイン
開幕週の姫路は3日間とも最高気温が12℃以上で3月上旬の気温となった。PM2.5の飛散により遠くの景色は霞んでいたものの良いお天気の中で発走時刻を迎える。重賞ファンファーレが鳴り響くと同時にフセノオーロラがゲートで突進するハプニング。幸い人馬ともに異常はなく兵庫クイーンセレクションのゲートが開かれた。
飛び出しは若干ばらつき、ミストラルピンクが後方からとなる。素晴らしいダッシュをみせたのが高知のイットウショウグウ、セクシーキャットの2頭。併走しながらレースを引っ張る。五分のスタートを切った高知のドライブアウェイは外へ切り替えながら3番手を確保。内にチョッパスニー、笠松のプチプラージュが続く。中団にはキミノハート、グランコスメ、ウイングスオールがつける。一列後ろにフセノオーロラとミストラルピンク。後方は8枠のレイナボニータ、アップップの順で1コーナーを通過する。馬群全長は12馬身で2コーナーへ。
イットウショウグウが軽快に飛ばして向正面に入る。セクシーキャットがクビ差で追走。先行勢を見ながらドライブアウェイは3番手。直後にプチプラージュが続く。向正面に入ると好位にいたチョッパスニーの脚色が鈍る。そのままズルズルと後退してしまった。直後にいたキミノハート、ウイングスオール、グランコスメ、フセノオーロラは早めに動こうとするが前との差は詰まらない。対照的にドライブアウェイは抜群の手応えで前を行く2頭に迫る。いつでも抜け出せるぞと言わんばかりの雰囲気だ。後方で構えていたレイナボニータが外からじわじわ位置を上げて7番手に浮上。先頭との差は8馬身で3コーナーへ突入する。
ドライブアウェイは3コーナー過ぎで先行する2頭を捕まえると、並ぶ間もなく先頭に躍り出る。レースを牽引したイットウショウグウは失速。粘りをみせるセクシーキャットだが抜き返す余力はなかった。外へ切り替えたプチプラージュは3番手に浮上。その後ろからウイングスオール、キミノハート、レイナボニータ、フセノオーロラが追いかけて4コーナーへ向かう。
先頭で最後の直線に入ったドライブアウェイはさらに加速。別次元の末脚を披露して後続を置き去りにした。凄い勢いでゴールへと進んでいく。そうなると焦点は2着争いだ。しぶとく粘るセクシーキャットに外からプチプラージュ、レイナボニータ、フセノオーロラが襲い掛かる。内からはウイングスオールも伸びてきて混戦ムード。キミノハートは伸びを欠いて脱落した。
次位争いを尻目にドライブアウェイは独走のままゴール板を通過した。2着に大差(1.8秒差)をつける大楽勝で人気に応えた。
2着は大外から伸びたレイナボニータ。初めての重賞挑戦だったが、上がり勝負に徹して持てる力を発揮した。
プチプラージュは3着。ドライブアウェイを見ながらの競馬で懸命に追ったが差を詰めることは出来なかった。内から伸びたウイングスオールは首差の4着。5着はフセノオーロラ。以降はセクシーキャット、キミノハートの順。2番人気のチョッパスニーは11着。
勝ったドライブアウェイは前走の金の鞍賞で敗れた鬱憤を晴らす快勝で2つ目のタイトルを獲得。3番手からの競馬となったが道中も気分よく運んで自身の能力を存分に発揮した。
◆高知のドライブアウェイは重賞2勝目。ネクストスター高知以来の重賞勝ちで通算成績を6戦5勝とした。
獲得タイトル
2024 ネクストスター高知
2025 兵庫クイーンセレクション
◆多田羅誠也騎手(高知)は兵庫の重賞2勝目。兵庫での重賞勝ちは2022年の園田FCスプリント(ダノングッド)以来。
◆工藤真司厩舎(高知)は兵庫の重賞は初制覇。
◆多田羅誠也騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
「今日は気分良く走ってくれて凄いレースをしてくれました」と、多田羅誠也騎手はホッとした表情。
「ネクストスター高知の時がイレ込みが凄くて前走から厩舎装鞍にしていました。出来るだけイレ込まないように工夫していました。今回は落ち着いていましたね」
初の遠征競馬だったが高知の快速牝馬は物怖じせずパドックを周回していた。
前走はスタートで躓き、道中も内に閉じ込められるなど本来の走りが出来なかった。発馬に注目が集まったがまずまずの飛び出しを見せた。
「スタートは五分ぐらいでしたが、追っつけて位置を取りにいきました。前のレースを見て内が重そうだったので無理をさせましたけど良いポジションが取れました」
揉まれることなく最初のコーナーまでに外へ持ち出し3番手の外を確保。絶好のポジションにつけた。
「1コーナーでこれは勝てるかなと思いました。外まわりでしたが馬場の走りやすい所を通れたのも大きかったです。終始手応えも良く進んでくれて、いつでも抜け出せる感じでしたね。ただ、直線の短いコースなので出来るだけ早く動こうと意識していました」
3コーナー手前から徐々に先行勢との差を詰めると残り400m付近で先頭に立つ。危なげない競馬で同世代のライバル達を圧倒した。
「控える競馬でもスムーズに行けたので最後まで力を出し切ってくれました。今後に向けて収穫ですね。もっと強い相手、さらに上の舞台で戦えると思いますし、牡馬相手でも勝負できる能力がありますよ」と、彼女の将来性を期待している。
大阪府出身の多田羅誠也騎手は姫路競馬場での騎乗は初めてだった。姫路初騎乗初勝利を重賞レースで飾った。
「これまで様々な競馬場で乗せてもらいましたが、今回の姫路を勝って西日本地区7場全てで重賞を勝つことができました。チャンスのある馬で騎乗機会をいただけたお陰だと思います」
冬季シーズンのみ開催される姫路競馬場。行われる重賞レースも少ない。遠征騎手が限られたチャンスで勝つのも至難の業だ。去年、ばんえいを除く現存する地方競馬全場で重賞制覇を達成した吉原寛人騎手も最後に残していたのが姫路だった。
「吉原さんみたいに南関東や他の地区で重賞を勝つのは・・・簡単なことではないので(笑)」と、謙遜していた。
多田羅騎手は今年7年目。高知で毎年リーディング上位に入っている注目のジョッキーだ。今後の高知競馬を担う若武者から目が離せない。
総評
今年も高知からさらに上のステージで戦えそうな逸材が登場。今後の動向に注目だ。
だが、地元勢も重賞初挑戦のレイナボニータが上がりの脚を活かして2着と好走。ウイングスオールも姫路では不利とされる1枠でロスなく立ち回って4着と奮闘。この先の重賞に向けて順調に力をつけていってほしい。
兵庫の3歳戦は、クラスが4分割(A、B、C1、C2)された。春の重賞へ駒を進めるには勝ち上がることと同時に賞金の加算も必須だ。兵庫で行われる次の3歳重賞は2月20日(木)の第17回兵庫ユースカップ(姫路)。出走枠を巡っての戦いが始まっている。2歳時から活躍する実績馬と他地区からの転入組、一歩ずつ階段を上ってきた新興勢力が冬の姫路でしのぎを削る。手に汗握る熱戦にご期待ください。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一