2023 のじぎく賞 レポート

2023年5月11日(木)

3歳牝馬の重賞競走「第61回のじぎく賞」に重賞勝ち馬5頭を含む12頭が出走。グランダムジャパン2023、3歳シーズンの6戦目。同レースを勝利したエレーヌ(笠松)、マンボビーン、トーコーニーケ、トーコーヴィーナスがシリーズの優勝馬に輝いている。

今年は重賞勝ち馬5頭が揃い、豪華なマッチメイクとなった。4戦無敗で昨年の園田ジュニアカップを制し、兵庫最優秀2歳馬に輝いたスマイルミーシャ。華麗な逃走劇で重賞連勝中のサラキャサリン。ル・プランタン賞で初重賞制覇を飾ったマルグリッド。園田プリンセスカップの勝ち馬アドワン。他地区からは留守杯日高賞を逃げ切りで勝利したワイズゴールド(大井)。同レース2着のキャッツライズ(川崎)が遠征。

単勝1.6倍の支持を集め1番人気となったのがスマイルミーシャ。昨年11月のデビューから4戦無敗で園田ジュニアカップを制し、兵庫の最優秀2歳馬に選出された。その後は一息入れて4月の菊水賞を目標に調整が進められた。復帰戦となった菊水賞はマイナス20kgでの出走。大幅馬体減で心配されたものの2着は確保。好位から勝ち馬に迫る走りをみせた。今回は牝馬限定の全国交流の重賞だが、これまでの実績を評価されて人気を集めた。


2番人気(単勝4.2倍)はサラキャサリン。1月の兵庫クイーンセレクションは不利と言われていた姫路の最内枠から逃げ切りを決めて初重賞制覇。デビュー9年目の松木大地騎手に初タイトルをプレゼント。続く3月の若草賞土古記念(名古屋)も主導権を握る。序盤から速い流れを作るとゴールまで一人旅。自分のスタイルを貫き重賞連勝を飾った。今回は初めての1700m戦。今後に向けて試金石の一戦となる。

水沢の留守杯日高賞を逃げ切りで勝利した大井のワイズゴールドが3番人気(単勝5.6倍)。半兄は2021年に無敗で兵庫若駒賞、園田ジュニアカップを制したガリバーストーム。今回は名古屋の岡部誠騎手を配し重賞連勝を狙う。

南関東では逃げ、先行競馬で4勝を挙げている川崎のキャッツライズが4番人気(単勝12.0倍)。留守杯日高賞はワイズゴールドに突き放されたが2着を確保。川崎の町田直希騎手はキャリア9戦の内8戦でコンビを組んでいる。

佐賀のル・プランタン賞で初重賞制覇を飾ったマルグリッドは5番人気(単勝16.0倍)。園田ジュニアカップ3着のヒメツルイチモンジが6番人気(単勝17.0倍)で続いた。

出走馬

1番 (大)ワイズゴールド 岡部誠騎手
2番 ブチエー 鴨宮祥行騎手
3番 ジョイブラック 広瀬航騎手
4番 スマイルミーシャ 吉村智洋騎手
5番 (名)エイシンメヌエット 今井貴大騎手
6番 アユチャンプ 大山真吾騎手
7番 ヒメツルイチモンジ 下原理騎手
8番 (名)ティーズブライト 大畑雅章騎手
9番 (川)キャッツライズ 町田直希騎手
10番 マルグリッド 笹田知宏騎手
11番 サラキャサリン 松木大地騎手
12番 アドワン 田野豊三騎手

レース

スタート

1周目向正面

1周目3〜4コーナー

正面スタンド前

2周目向正面入口

2周目3コーナー手前

2周目3〜4コーナー

2周目4コーナー

最後の直線

最後の直線


ゴールイン

若き乙女達による戦いは雲一つない快晴の下で行われた。そのだサマー競馬(薄暮)の期間中でメインレースの時刻は17時55分。西側の空はきれいな夕暮れがみられた。


スムーズなゲート入りでのじぎく賞の幕が開いた。好発はワイズゴールド、スマイルミーシャ、サラキャサリンの3頭。人気馬が抜群のスタートを決めた。二の脚が速いサラキャサリンは、1周目の3コーナー手前で前に出ると主導権を握る。大外枠のアドワンも積極策で2番手につける。ワイズゴールドは無理せず3番手で折り合う。スマイルミーシャも4番手を確保した。以下キャッツライズ、ブチエー、ヒメツルイチモンジ、ジョイブラック、マルグリッドと追走。後方3頭は離れてエイシンメヌエット、ティーズブライト、アユチャンプが続く。

先手を取ったサラキャサリンはペースを落とす事なく逃げる。4馬身後方の2番手にアドワン、3番手はワイズゴールド。キャッツライズが外からポジションを上げ4番手に浮上。スマイルミーシャは5番手でじっくり構えている。隊列に変化はなくホームストレートから1コーナーへと向かっていく。

単騎逃げに持ち込んだサラキャサリンは1~2コーナーの中間地点から徐々にリードを広げ向正面に入る。それを見ていたスマイルミーシャと吉村騎手が2コーナーから動く。ゴーサインと同時に加速すると前にいた各馬を抜き去り2番手に浮上。ヒメツルイチモンジ、マルグリッドの2頭も進出を開始する。


自分の展開に持ち込んだサラキャサリンだが、2周目3コーナー手前から脚色が鈍り始める。スピードに乗ったスマイルミーシャとの差が無くなっていく。残り400mを過ぎた所でスマイルミーシャがサラキャサリンを抜き去り先頭に立つ。離れた3番手集団はキャッツライズ、ワイズゴールド、ヒメツルイチモンジ、マルグリッドの4頭で4コーナーへ。

直線に入ってもスピードが衰えないスマイルミーシャ。吉村騎手は緩めることなく追う。力尽きたサラキャサリンは後退。2番手以降は直線内に進路を取ったワイズゴールド、キャッツライズ、外へと持ち出したヒメツルイチモンジ、マルグリッドが追いかけるも差が詰まらない。

スマイルミーシャは後続に5馬身差をつける快勝で重賞2勝目を挙げた。
吉村騎手が後ろを振り返る余裕をみせており着差以上の圧勝だった。

2着はマルグリッド。遠征で減っていた馬体も回復。外枠で中団より後ろのポジションとなったが、道中は脚をためて末脚にかける競馬で2着争いを制した。今後も得意の中距離戦での活躍に期待が集まる。

好位で立ち回ったワイズゴールドは3着。勝負どころで一旦後退しかけたものの、直線は内ラチ沿いから伸びた。遠征競馬で1着、3着とポイントを上積みし、グランダムジャパン2023、3歳シーズンの首位に立った(24ポイント)。

2番人気のサラキャサリンは7着。初の中距離戦で自分の競馬に徹したが距離の壁に泣いた。パドックから入れ込みが激しく、早々に馬場入りしてテンションを落ち着かせようとする姿がみられた。今後は距離、気性面が課題になりそうだ。

スマイルミーシャは6戦5勝。重賞通算2勝目を挙げた。

獲得タイトル

2022 園田ジュニアカップ
2023 のじぎく賞

◆吉村智洋騎手は重賞43勝目。ニシケンボブで勝利したゴールドジュニア(笠松)に続き、今年の重賞2勝目となった。のじぎく賞は2018年(トゥリパ)以来、5年ぶり2度目の勝利。

◆飯田良弘厩舎は重賞4勝目。 昨年の園田ジュニアカップ以来の重賞制覇。
のじぎく賞は初制覇。

◆吉村智洋騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

勝利インタビューを受ける吉村騎手は自信に満ち溢れた表情をしていた。

大幅馬体減後の状態面については「いつもと変わらず感じは良かったので、上積みしかないと思っていました」と心配はなかったようだ。

「調教師の指示通り。スタート言って良いポジションを取りに行きました。(サラキャサリンの大逃げ)想定内でした。良い目標だなと思って、後ろからじっくり見ているだけでした」と展開面も位置取りも理想通りだったようだ。


2コーナー付近からのスパートついては「前回はしくじったので、今日は馬が強いのは分かっていたので、押し切ってくれると確信して動きました」と話すとおり、自信を持っての仕掛けだった。

「数も使っていないし、まだ粗削りな面があります。気性面ももう少し落ち着けばまだまだ引き出しがあるし、伸び代も充分ありそうです。」
デビューから手綱を取る吉村騎手はスマイルミーシャの更なる成長を期待している。

次走は来月14日の兵庫ダービー。ベラジオソノダラブとの再戦となる。

「操縦性はかなり良いので兵庫ダービーも楽しみです。相手は一頭ではないので、過信せずに頑張りたいです。」

勝って兜の尾を締める。大一番に向けて弾みがつく勝利となった。

牝馬の兵庫ダービー制覇は2000年以降でアヤノミドリ(00)、メイレディ(12)、ユメノアトサキ(13)の3頭だけ。10年ぶりの牝馬制覇なるか?兵庫の歌姫に期待しよう。

総評

レース後、飯田良弘調教師に話を聞いた。「スタートは五分に出てくれた。1コーナーで内に入れ、冷静に立ち回ってくれたのがよかったです」と振り返る。向正面からの仕掛けについては「早く追いつかないとというのもあったのかもしれない。
ゴーサインを出したら反応してキレる脚を使ってくれましたね」と長い脚を使って結果を残した愛馬を称えた。菊水賞で減った馬体は今回プラス4kgと微増。飯田調教師は「攻め馬をしっかりしながらも、体重を戻せたので良かった。馬体は今回ぐらいがちょうど良いのかもしれません。」
2歳時は500kg前後の馬体重で出走していたが絞れてさらにキレ味が増したようだ。
次走は来月14日の兵庫ダービー。
「まだ粗削りなところはあります。でもレースでは折り合いつくし、中距離も大丈夫そう。レース前のパドックで気持ちのセーブが出来るようになってくれたら」と飯田調教師はさらなる成長を期待している。


 文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一

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