2023 兵庫ゴールドカップ レポート
2023年10月20日(金)
今年のナイター開催もこの日を入れてあと2日。
この日は、兵庫の最高齢誘導馬である30歳のアイスバーグの最高齢誘導記録更新を記念する写真撮影会が第9レースの誘導後に行われた。
今週3日間連続開催の初日、18日の第1レースからアイスバーグが誘導馬として登場。
園田競馬のマスコットそのたんのモデルにもなった伝説の誘導馬マコーリーが、2015年10月16日に誘導した記録をこの日に更新した。
撮影会には後輩誘導馬のメイショウシャーク(26歳)、ストラディヴァリオ(20歳)も駆けつけ、3頭仲良く、西ウイナーズサークルで多くのお客さんからの祝福を受けた。
また第9レース終了後には、第2回シリーズ(7〜9月)の最優秀騎手賞(吉村智洋騎手)、敢闘賞(川原正一騎手、下原理騎手)の表彰も行われ、いつものその金ナイター以上の熱気に包まれた。
ちなみにそのアイスバーグの記録更新を記念する第9レース「マコーリーを超えたよ!アイスバーグがんばっているで賞」で兵庫最高齢騎手64歳の川原正一騎手が勝利したのも何かの縁を感じてしまうところだ。
そんな内容盛り沢山のこの日のメインを飾ったのが全国交流重賞、第7回兵庫ゴールドカップだ。一昨年、去年は船橋のコパノフィーリングが圧巻の強さで連覇達成。今年も大井、川崎、浦和、高知から実力を備えた5頭が遠征してきた。
単勝2.4倍の1番人気になったのは大井のブラックストーム。前走のアフター5スター賞ではスムーズさを欠くレースになったが、それでも上位と差のない4着と負けて強しの印象を残した。また、そのときの上位3頭が次走の東京盃(Jpn2)で3〜5着と健闘を見せたこともあり、初の長距離遠征ではあったが人気の中心となった。
2番人気は地元筆頭格のパールプレミアで単勝3.2倍。
前走7月のサマーカップ(笠松)では、鮮やかに逃げ切り完勝。メンバー最多の重賞3勝とした。3ヶ月ぶりと間隔は空いたが、問題なく走れる仕上がりと陣営は話す。近走は逃げの手で結果を出しているが、今回は果たして。
3番人気は単勝4.9倍の川崎ベストマッチョ。メンバー最年長のセン10歳。前走の浦和のプラチナカップでも3着と、ここまで大きな衰えは見せていない。
去年の秋はゴールド走覇(名古屋)で重賞初制覇。園田は3年前、兵庫ゴールドトロフィーで勝ち馬サクセスエナジーのハナ差2着と惜敗の舞台。
忘れ物を取りに園田に帰ってきた。
あとは離れた4人気の9.6倍に前走A2を勝って勢いにのる川崎のヴァヴィロフ、夏を乗り越え上昇ムードの地元馬イナズマテーラーが5人気の17.4倍で続いた。
人気はパールプレミアを除くと遠征馬に比較的集まり、上位拮抗の様相を呈していた。
出走馬
レース
スタート
1周目スタンド前①
1周目スタンド前②
2コーナー
向正面
3コーナー
3〜4コーナー
4コーナー
最後の直線①
最後の直線②
最後の直線③
ゴールイン
この日は開場前から雨がぱらつき、一時まとまった雨が降った影響で3レース以降稍重に。メイン発走前の19時40分現在で実況席の温度計は18℃台と空気はひんやりとしていたが、対する場内は熱気を帯び、ファンファーレと共に歓声と拍手が沸き起こった。
好スタートはパールプレミアと高知ダノンジャスティス。出ムチを入れてパールプレミアが行く姿勢を見せると、内のダノンジャスティスは無理せず控えて一旦2番手に。対して、川崎のベストマッチョは近走先手を取る競馬を見せ続けてきたが、今回は外枠に加えてやや後手を踏んだことから外の2番手に付ける格好になった。
あとは浦和のワラがやや行きたがりながら馬群の中を進んで4番手、川崎のヴァヴィロフ、エイシンヌプリやトリニティノット、イナズマテーラーが中団を形成。それらと並んで、スタートで行き脚がつかなかった大井ブラックストームが馬群の真っ只中を進む。隊列は切れ目なく、地元馬ケンジーフェイス、ヴィーダ、そしてプレイヤーズハイが最後方を形成して向正面へ。
向正面の中程に向かって、逃げるパールプレミア、これをマークするベストマッチョの2頭がややペースアップ、3番手以下とは4馬身差に。離されまいと懸命に追うダノンジャスティスとワラの3番手グループ。そこから2馬身差、ヴァヴィロフ、イナズマテーラー、さらにエイシンヌプリら中団から後方勢も一気動き出す。人気のブラックストームはなかなかポジションを上げられず後方4番手を追走。
隊列は縦に長くなり、3、4コーナー中間点。ここで悠々と先頭に並びかけるベストマッチョ。4コーナー手前で手応えよく先頭に変わるとパールプレミアは2番手に後退。しかしこれに食い下がって直線へ。
残り200mを切って3番手にダノンジャスティス、その内からヴァヴィロフがじわじわ追い上げ、さらにはイナズマテーラー、外からケンジーフェイスが続いて、残り100m。
押し切りを図るも脚色が衰えてきたベストマッチョ、そして2番手のパールプレミア。ぐいぐい追い上げ、2頭に迫るダノンジャスティス。最後はベストマッチョとダノンジャスティス2頭の争いも、ゴール寸前、ダノンジャスティスがベストマッチョを差し切ってゴールイン。
実に園田遠征は8度目、兵庫の重賞戦線でも常に上位争いに絡んでいた高知のダノンジャスティスだったが、この日は単勝8人気の35.4倍に甘んじた。
下馬評を覆す見事な走りで、改めて園田との相性の良さを見せつけた。
クビ差の2着にベストマッチョ、そこから1馬身1/4差の3着にヴァヴィロフの川崎勢2頭。7歳と10歳のベテランによるワンツー。遠征馬の上位独占となった。地元最先着はパールプレミアで4着。後方から脚を見せたケンジーフェイスが5着となった。
◆ダノンジャスティスはこれで通算59戦8勝、重賞は去年の園田チャレンジカップに続いて2勝目。高知所属馬でありながら重賞勝ちは園田のみ。
今回が8度目の園田遠征となったが、これで成績は8戦2勝 2着1回 3着3回とほぼ3着内の好走。コース適性の高さをまざまざと見せつけた。
獲得タイトル
2022 園田チャレンジカップ
2023 兵庫ゴールドカップ
◆上田将司騎手は重賞通算9勝目。重賞勝利は、2022年黒潮ジュニアチャンピオンシップをハチキンムスメで勝利して以来、約1年ぶりで今年初。
兵庫の重賞は2022年の園田チャレンジカップに続いて2勝目となった。
◆別府真司厩舎は重賞通算56勝目。今年1月のゴールドスプリント(佐賀)をダノングッドで制して以来、今年の2勝目。兵庫の重賞は2022年の園田チャレンジカップに続いて通算4勝目となった。
2021年と2022年の園田FCスプリントではダノングッドで連覇達成。
ダノングッドとダノンジャスティスの2頭を擁し、2021年から3年連続での兵庫の重賞勝利となった。
◆上田将司騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
ダノンジャスティスで会心の差し切り勝利を収めた上田騎手。
「本当に園田の馬場が合うみたいで、いつも高知なら3コーナーでバタバタしてしまうんですけど、(園田だと)そこから伸びてくれるんで、本当に馬場の相性が良いんだと思います」と馬場適性の高さを勝因に挙げた。
「(スタートは)パールプレミアとどっちが速いかなと思ったんですけど、やっぱり向こうが速かったんで、その後ろでと思って」。
去年の園田チャレンジカップではイン前有利の馬場状態を活かしての逃げ切り勝利だったが、今回はその言葉通り、前の2頭から離れた3番手のインを進んだ。
直線はやや外に持ち出し、早め先頭から押し切りを図るベストマッチョをゴール前で差し切った。
直線での伸びが目立ったものの、いつもあまり手応えが良い馬ではないというダノンジャスティス。それは今回も同様だったようで、直線に向いたときでも「3着あるかなという感じ」だったというから驚きだ。
「こっちは止まらず伸びたけど、向こうが止まったかなという感じで。(差し切ったときの驚きは)ちょっとじゃないです」と話したように、鞍上もびっくりの勝利だったようだ。
このコンビで去年の園田チャレンジカップに続いての重賞制覇。コース巧者っぷりを遺憾無く発揮した。
「本当に園田の馬場も相性が良くて、別府先生も『今日もジャスティスの馬場だ』って言っていたんで、自信を持って…は乗ってないですけど頑張りました(笑)」
セン馬7歳、ベテランの域に入っているダノンジャスティスは今回連闘策で結果を出した。
「ローテーション的にもちょっと厳しいかなと思ったんですけど、南関東の馬にも勝ってくれて本当に頭が下がります」と上田騎手は相棒を労った。
ちなみに口取りの時に場内から「別府先生ー!」という声が上がり、改めて別府調教師の人気の高さを感じたのだが、そのことについて触れた上田騎手のコメントがユニークだったので、ご存じない方はぜひ優勝インタビューの様子をご覧いただきたい。
総評
「最初は上田騎手に『負けることないから』と冗談で言ったんですけど、本当はレースに参加しようぐらいの気持ちでした。スタートも良かったし、本当に園田の馬場が合っているんでしょうね」と師の想定をも超える結果だったようだ。
”水を得た魚”ならぬ、”園田に来たジャスティス”は本当に怖い。
一方、勝者のダノンジャスティスは、今後少しゆっくりさせてからまた地元戦を想定しているとのこと。
また第二のホーム、園田競馬場でその勇姿を、あっと言わせる激走を見せてもらいたい。
文:木村寿伸
写真:齋藤寿一