2024 園田プリンセスカップ レポート
2024年09月12日(木)
兵庫で今年最初の2歳重賞は牝馬限定の第26回園田プリンセスカップ。グランダムジャパン2024、2歳シーズンの開幕戦としてお馴染みの競走だ。シリーズは12月31日の東京2歳優駿牝馬(大井)まで続く。
去年は道営馬2頭がワンツーフィニッシュ。2着馬のシトラルテミニは次走の金沢プリンセスカップで初重賞V。その後はラブミーチャン記念2着、東京2歳優駿牝馬4着でまとめてグランダムジャパン2歳シーズンの女王に輝いた。園田プリンセスカップを制したコモリリーガルも総合2位に入っていて、シリーズ制覇に向けて重要な一戦となる。
今年は遠征馬5頭、地元兵庫7頭が名乗りを上げてフルゲート12頭で争われた。
去年は9頭立てとなったが今年はゲートが全て埋まった。他地区からは無敗の重賞勝ち馬に前走重賞2着馬、4戦全て2着以内の堅実馬など強敵揃い。地元勢は前走ステップアップ(オープン)を勝利したアップップ。未勝利戦を圧勝したウイングスオール。820mの新馬戦を好時計で勝ったミニフィーユなど高素材が迎え撃つ。
単勝1番人気(1.4倍)は北海道のリオンダリーナ。前走はリリーカップ(門別1000m)を逃げ切りで重賞初制覇を飾った。今回は初の長距離輸送に距離延長と乗り越えなければならない課題はあるが、鞍上には園田を知り尽くす下原理騎手を確保。下原騎手は、8月の摂津盃、今月1日のサマーチャンピオン(佐賀Jpn3)と人気薄で重賞を連勝しており勢いがある。なお、去年は道営のコモリリーガルを勝利に導いており、同レース連覇を目指す。
船橋のリヴェルベロが2番人気の5.5倍。
通算成績は5戦1勝だが、1000~1500mまでの距離を経験して全て4着以内にまとめている。前走の重賞ルーキーズサマーカップ(浦和)は勝ち馬には離されたが2着を確保。初めて2番手からの競馬で最後まで粘れたのも好材料。デビュー4年目の木間塚騎手と人馬ともに初タイトルを狙う。
地元兵庫のウイングスオールが3番人気の7.7倍。母のシュエットは2016年の菊水賞を制覇。新子雅司厩舎ゆかりの血統馬で姉のアイガットユー、インタールード続いて在籍。デビュー2戦目の未勝利戦で後続に8馬身差をつける圧勝で初勝利。姉2頭が挑戦して届かなかった園田プリンセスカップのタイトルを狙う。
4番人気の9.2倍は川崎のラブミールイス。これまで4戦を経験して1勝、2着3回と抜群の安定感。地元川崎のJRA認定戦でも牡馬相手に互角のレースをみせている。初の他地区遠征となるがデビューからコンビを組む山崎誠士騎手が共に兵庫へ殴り込む。
上位4頭までが単勝10倍以下。小牧太騎手騎乗のヴィルミーキスミー(北海道)は単勝5番人気の16.9倍となった。
出走馬
レース
スタート
正面スタンド前
1コーナー手前
2コーナー
向正面
3コーナー
4コーナー~最後の直線
最後の直線①
最後の直線②
ゴールイン
レース当日の朝から良い天気となったが気温がぐんぐん上昇。15時頃には実況席の温度計は37度を超えた。残暑が厳しい中で2歳牝馬の戦いが幕を開けた。馬場状態は去年に続いて良馬場。最高のコンディションでファンファーレが鳴り響いた。しかし、1番人気のリオンダリーナは初めての園田で戸惑ったのか枠入りを嫌がる。何度も尻っ跳ねをしてゲートから離れようとした。3分近く経過したところで目隠しをすると素直に7番ゲートへと入った。その他の各馬はすんなりと枠に入ってスタートが切られた。
人気上位馬の中ではラブミールイスがスタートで若干後手を踏むが、まずまず揃った飛び出しとなった。逃げ、先行タイプが揃ったものの、良いスタートを切ったリオンダリーナが行き脚も良くすんなり先手を奪う。
最内枠のリヴェルベロは外に切り替えて2番手。直後にアップップ、ウイングスオールの地元2頭、そして北海道のヴィルミーキスミーが続く。
中団にはミニフィーユ、ヤシロスマイリー。出負けした川崎のラブミールイスは8番手からの競馬。後方にはエンゲツトウ、コモリロゼッタ、名古屋のライフフルスマイル。3馬身遅れてコネコチャンが追走して1コーナーを通過。
逃げるリオンダリーナが速い流れを作ると、隊列が徐々にばらけていった。
馬順に大きな変化が無いまま先頭が残り600mを通過。中団にいたラブミールイスが徐々に位置を上げていく。しかし、3コーナーでは先頭との差はおよそ10馬身。先行勢の中で先に仕掛けたのは地元兵庫のウイングスオール。3角過ぎから早めの進出で4コーナーでは一旦2番手へと浮上。逃げるリオンダリーナとの差を2馬身に縮める。好位内のリヴェルベロ、アップップ。外から追い上げるヴィルミーキスミー、ラブミールイスもラストスパートに入ったが、道営の重賞ウイナーにはまだ余力が残っていた。
リオンダリーナ鞍上の下原理騎手が4角で気合いを入れると一気に加速。あっという間に後続との差を広げ独走状態に入る。そうなると注目は2着以降の争い。好位でレースを進めたアップップ、リヴェルベロの脚色が鈍り脱落。積極的に動いたウイングスオールと、馬場の五分どころを通ったヴィルミーキスミーとラブミールイスの3頭に絞られた。
格の違いを見せつけた北海道のリオンダリーナが2着馬に5馬身差をつける快勝。単勝1倍台の支持に応えた。2着争いは上がり最速の脚で追い込んだ川崎のラブミールイスが競り勝つ。首差の3着は北海道のヴィルミーキスミー。
重賞勝ち馬に真っ向勝負を挑んだ兵庫のウイングスオールは1/2馬身差の4着。2番手でレースを進めた船橋のリヴェルベロが5着。単勝人気上位の5頭が掲示板を独占する結果となった。
勝ち時計は1分30秒6。オーストラリア産の白い砂に変わった2020年以降では最速のタイム。2020年のラジアントエンティを0.3秒上回る時計を記録した。
◆モーニン産駒のリオンダリーナは4戦無敗で重賞を連勝。重賞は通算2勝目。
獲得タイトル
2024 リリーカップ(門別)
2024 園田プリンセスカップ
◆下原理騎手は重賞通算91勝目。摂津盃、サマーチャンピオン(佐賀)に続き重賞騎乗機会3連勝で、今年6勝目。
園田プリンセスカップは去年に続いて連覇で3勝目となった。
◆北海道の小国博行厩舎は重賞通算5勝目。兵庫の重賞は初制覇となった。
◆下原理騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
「正直焦りました」と、枠入りを嫌がるリオンダリーナに手を焼いていた下原理騎手。無事に勝利へ導きホッとした表情でレースを振り返った。
「ゲートでごねると能力に影響する事もあるんですが、この馬はその影響なく走ってくれました。乗っている感じは馬が余裕たっぷりで相当能力が高いですね」
ゲートが開くと二の脚も速くあっさり主導権を握る。4コーナー付近で下原騎手の鞭に反応してさらに加速した。
「4角手前でふわつく面をみせていたので、気合を入れたらハミも取ってくれてこのまま行こうと思いました。後続馬の音も聞こえないくらいでした」
ゲートが開くと心配不要の強さで初の1400m戦を先頭でゴールした。距離延長も小回りコースもあっさりと克服し将来が楽しみな馬だ。
「まだまだ遊びがあるのでこれから更に能力を上げてくると思います。1400mより長くても対応出来ると思いますよ。次も乗りたいです!」と同馬の才能に惚れ込んだ。
兵庫生え抜き騎手の重賞最多勝利記録を持つ下原騎手は8月の摂津盃、9月のサマーチャンピオン(佐賀)、今回の園田プリンセスカップを制して重賞騎乗機会3連勝で重賞91勝目となった。
「暑いですけど気合いで乗り切っています。節目の100まであと9つなので頑張ります」
人気薄での摂津盃制覇から流れを引き寄せると、勝ち鞍を量産している下原理騎手。残暑が厳しい中で実施される秋競馬は”兵庫の優勝請負人”から目が離せない。9月19日(木)に行われる第31回ゴールデンジョッキーカップに今年も選出。大会初制覇に向けて弾みをつけた。
なお、園田プリンセスカップ無敗制覇は2016年のナンネッタ以来。過去にはトーコーヴィーナス、カツゲキドラマ、アスカリーブル、エンドスルーも無傷で重賞制覇を決めている。
トーコーヴィーナスは後にグランダムジャパン「3歳シーズン」、「古馬シーズン」のW制覇を達成。2016年のレディスプレリュード(大井・Jpn2)で同着の2着と善戦。兵庫代表する名牝となった。
アスカリーブルは同レース制覇後に南関東へ移籍。ダートグレード競走の関東オークスを制覇するなど輝かしい成績を残している。
今年の出走馬から地方競馬を代表する新たなNewヒロインが誕生するかもしれない。今後も彼女達の動向に注目していきたい。
総評
「レースを使いだしてからゲートが悪くなってきたので練習をしていたのですが・・・これからの課題ですね」。枠入りに3分以上要したことによりレース終了後に調教再検査という裁定が下りた。
「状態は悪くなく馬自身も成長していますので距離を延ばしてみました。道営では1000mしか使っていませんが、調教では折り合いを欠く面はなく心配はありません。距離は延びても大丈夫ですね。再検査を受けなければならないので、今後についてはオーナーと相談して決めていきます」。ゲートという課題を乗り越え今後のグランダム路線で堂々と主役を張ってほしい。
兵庫勢の再先着はウイングスオールの4着。道中4番手追走から早めに進出を始めると4角では2番手に浮上。最後は力尽きたが、勝ち馬に真っ向勝負を挑む姿に熱いものがあった。兵庫ゆかりの血統馬だけに今後の成長に注目したい。
次週の9月19日(木)には2歳重賞「第2回兵庫ジュベナイルカップ」が実施される。オオエライジンやジンギのような兵庫の看板馬になる可能性がある馬達が顔を揃える。将来有望の若馬達にご期待ください。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一