2023 兵庫チャンピオンシップ レポート

2023年05月03日(水祝)

兵庫三冠の第2戦「兵庫チャンピオンシップ(Jpn2)」。
第1回優勝馬はミツアキサイレンス(笠松)、第2回優勝馬は兵庫三冠にも輝いたロードバクシン(兵庫)。
しかし地方馬の優勝はこの2頭のみで、第3回以降はJRA勢が21連勝中と強さを見せている。

このレースは3歳ダート中距離路線の重要なレースの一つに数えられてきたが、昨秋に発表された「全日本的なダート競走の体系整備」により2024年からは1400mに変更され「3歳ダート短距離王決定戦」に生まれ変わることとなった。

1870mで行われる最後の兵庫チャンピオンシップに、JRA5頭、笠松1頭を加えた12頭が出走した。

単勝1.4倍の圧倒的な1番人気となったのは、JRAミトノオー。
1400mのオキザリス賞こそ中団追走で道中バランスを崩す不利もあって11着と大敗したが、1800m戦は3戦3勝。今年に入っての黒竹賞、伏竜Sの連勝は強い内容での逃げ切り勝利だった。
特に、前走の伏竜Sは2~6着勢が全て差し馬が台頭するという先行勢には厳しいペースで逃げながら2馬身半差をつけて粘り切る圧巻の競馬。
今回は、ここまでコンビを組んだ木幡巧也騎手に替わって、レジェンド武豊騎手が初めて手綱を取った。


2番人気は単勝3.7倍でJRAメイショウオーロラ。3月に既走馬相手のデビュー戦を好時計で逃げ切ると、2戦目は2番手から抜け出すレースであっさり連勝。2戦2勝で重賞初挑戦となった今回、2006年グレイスティアラ以来史上2頭目の牝馬チャンピオンを目指す。

東京ダート1600mで2勝し、前走のニュージーランドTから再びダートに矛先を向けたJRAサンライズジークが3番人気(9.6倍)。初勝利に5戦を要したが、阪神ダート1800mの舞台で変わり身を見せて連勝を飾ったキリンジが4番人気(11.3倍)。

地元兵庫勢は、今年も菊水賞馬が参戦。第一冠を逃げ切りで制したベラジオソノダラブはここまで重賞3勝。道中の折り合い面に課題があったが、菊水賞は自分のペースで走ることができうまく折り合えたことが勝因だった。
過去10年で地方馬の馬券絡みは2019年のバンローズキングス(3着)1頭のみとJRA勢相手に厳しい戦いが予想されたが、地方馬の最右翼と目され、地元ファンの期待を集めた。

出走馬

1番  (笠)ミコフランシスカ 松本剛志騎手
2番 (J)キリンジ 下原理騎手
3番 (J)サンライズジーク M.デムーロ騎手
4番 (J)マルカラピッド 松若風馬騎手
5番 ネバーエバー 笹田知宏騎手
6番 (J)ミトノオー 武豊騎手
7番 ベラジオソノダラブ 田中学騎手
8番 ウィンチップ 廣瀬航騎手
9番 ビキニボーイ 吉村智洋騎手
10番 ブエラフェルテ 鴨宮祥行騎手
11番 (J)メイショウオーロラ 横山典弘騎手
12番 サインポール 小谷周平騎手

レース

スタート

1周目3コーナー手前

1周目正面スタンド前

2周目向正面入口

2周目3〜4コーナー

最後の直線

最後の直線

最後の直線③


ゴールイン

好天に恵まれ、馬場状態は良。
3年前と2年前は無観客開催、昨年は上限5000人の入場制限があったが、今年は4年ぶりに制限のないゴールデンウィーク開催ということもあり、7000人近いファンで大いに賑わった。

当週から「そのだサマー競馬」(薄暮開催)がスタート。メインレースは夕暮れ近づく17時55分、わずかに赤く染まりかけた青空に生演奏のファンファーレと大きな拍手が溶け込み、ゲートが開いた。

まずは大きな出遅れなく12頭が飛び出した。特別速いゲート離れではなかったが、二の脚が速かった断然人気のミトノオーが早々と逃げに持ち込む。

メイショウオーロラが1周目3角手前で2番手に上がって、ややミトノオーを突く展開となり、3番手マルカラピッド、4番手ベラジオソノダラブと続いた。
その後ろ、サンライズジークとキリンジは中団からの追走となった。

1周目のスタンド前から徐々にミトノオーがメイショウオーロラを離し、3馬身くらいのリードを取ったままレースは進んでいく。馬群全長20馬身で縦長の展開。

2周目向正面に入ると、後続を気にすることなくミトノオーは自分のペースを守りながら後続との差を広げにかかる。単独2番手のメイショウオーロラは、前に置いていかれまいと早目に横山典弘騎手の手が動き始める。

その3馬身後ろの3番手以下も一斉に追い出しを開始するが、ミトノオーとの差を詰めることができない。

ミトノオーは、楽な手応えのままで3コーナーに入るとどんどん2番手以下との差を広げていった。

4コーナー。2番手はメイショウオーロラの勢いが鈍った所に、大外から一気にキリンジが追い上げ、さらに兵庫期待のベラジオソノダラブも進出。その後ろからサンライズジークも上がってきた。


しかし、これら2番手争いのはるか前でミトノオーが独走。直線に向く時には既に6馬身のリードを取っていた。
直線に入って軽く肩ムチを入れた以外、武豊騎手はほぼノーアクション。
大型ビジョンを見て後続との差を確認すると、残り100mは流しながらのゴールとなった。

ミトノオーは3連勝で悠々と重賞初制覇を果たした。これで第3回からJRA勢が22連勝に。
6馬身差の2着にキリンジが入り、メイショウオーロラは脚が上がりながらもなんとか3着は確保。サンライズジーク4着で、JRA勢が上位を独占。
地方最先着は地元兵庫ベラジオソノダラブの5着だった。

◆JRAミトノオーは3連勝で重賞初制覇を果たした。これで5戦4勝。

獲得タイトル

2023 兵庫チャンピオンシップ

◆武豊騎手は兵庫のダートグレード11勝目。その内訳は以下の通り。

 ・兵庫チャンピオンシップ 4勝 (03,08,09,23)
 ・兵庫ジュニアグランプリ 3勝 (99,01,02)
 ・兵庫ゴールドトロフィー 3勝 (02,04,17)
 ・JBCクラシック    1勝 (08)

兵庫での重賞制覇は、2017年の兵庫ゴールドトロフィーをグレイスフルリープで制して以来約5年半ぶり。


◆牧光二厩舎は重賞2勝目。2010年ローズS(JRA)をアニメイトバイオで優勝して以来13年ぶり。地方ダートグレードは初優勝。
2017年の兵庫チャンピオンシップは、1番人気だったリゾネーターで4着に敗れており、そのリベンジを6年ぶりに果たすことともなった。

◆武豊騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

武豊騎手は、ミトノオーに今回のパドックで初めて跨った。

「スタートは五分に出したい」と臨んだレースだったというが、「普通くらいには出た」ところから二の脚の速さで一気に先頭へ。

「ペースを間違えないように、小回りが初めてで大きい馬なのでステップを間違えないように」とキャリアの少ない3歳馬を百戦錬磨の名手が気を付けながらエスコートした。

「とても馬が気持ちよさそうに走ってくれていたので、無理に抑えず馬のリズムに合わせる形で乗っていました。ずっと雰囲気は良くて、後ろも距離があるのが分かっていたので、最後の直線に向いて、手応えと後ろの距離で大丈夫と思いました」と、直線200mを残して早々と勝利を確信する完勝だった。

総評

3歳ダート中距離界の“王”候補が園田で頭角を現した、その名もミトノオー。

何十頭ものG1馬の背中を知る武豊騎手が、「素質が凄くある。乗り味の良い馬。フットワークがとても綺麗でバランスの良い走りをして、心臓も強そうなので、このまま成長してくれればもっと大きい所も狙える」と賛辞を並べた。名手が将来性を高く評価したミトノオーの今後が楽しみだ。

3歳ダート王を争う相手は、2歳ダートチャンピオンでUAEダービー優勝からケンタッキーダービーにも挑戦したデルマソトガケをはじめ、カトレア賞勝ちのコンティノアールやヒヤシンスS勝ちのペリエールがいる。
さらに新馬戦4.3秒大差勝ちのヤマニンウルスも2戦2勝で強敵との対戦が待たれる1頭だ。
また、地方馬として初めてケンタッキーダービーに挑戦したマンダリンヒーロー(大井)や、伏竜Sに挑戦し3着に好走したヒーローコール(浦和)といった地方勢もJRA勢に負けじと食らいついて欲しい。

そしてここに兵庫勢も…。
地方最先着の5着だったベラジオソノダラブは、ミトノオーと同じロゴタイプ産駒。
同じ血を持つ者、牙を研ぎ、走りに磨きをかけて、いずれまたダートグレードの大舞台に立つ日を期待したい。


 文:三宅きみひと
写真:齋藤寿一

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