第31回ゴールデンジョッキーカップ
~中央、地方の名手を地元勢が迎え撃つ 最終戦まで縺れ込んだ優勝争い~
通算2000勝以上の実力派騎手による祭典「第31回ゴールデンジョッキーカップ」(GJC)。出場資格のある地方競馬28名・中央競馬8名の中から選ばれた12名の名手が園田競馬場に集結した。
騎手のオールスター戦が行われた9月19日。日陰で休憩していても汗が噴き出る異常な暑さとなった。それでも名手の競演を見届けようと2400名を超えるファンが来場。猛暑に負けない熱い声援が場内に響き渡った。
今年は兵庫から4名のゴールデンジョッキーが出場。これまで数々の栄光を掴んできた地元の戦士達が全国の強者を迎え撃つ。
5大会ぶりV目指す兵庫勢
兵庫には5名のゴールデンジョッキーが在籍している。現在、田中学騎手は腰痛により長期離脱中。GJCを過去3度制覇している名手の欠場は残念だが、4名のゴールデンジョッキーが園田の看板を背負って出場する。兵庫勢は2017年の田中学騎手以来、5大会ぶりの優勝を目指す。
終わりなきレジェンド 川原正一騎手
最年長は65歳の兵庫・川原正一騎手。2大会ぶり22回目の出場で過去に2度優勝経験がある。9月末時点で地方通算5840勝。地方競馬歴代では4番目、現役では的場文男騎手に次ぐ勝利数をマークしている。去年の秋には地方競馬最年長重賞勝利記録(64歳6ヵ月28日)を塗り替えた『終わりなきレジェンド』が大会最年長優勝を目指す。
「唯一の還暦ジョッキーですけど、若い騎手達に負けないように頑張ります」
馬上の魔術師 下原理騎手
6大会連続6度目の出場となった下原理騎手は9月に佐賀のサマーチャンピオン(Jpn3)をアラジンバローズで勝利。8年ぶりのダートグレード制覇を挙げると、勢いは止まらず翌週の園田プリンセスカップも勝利。大舞台に強く兵庫生え抜き騎手の最多重賞勝利記録(91勝)を更新している『馬上の魔術師』。まだ手に入れていないGJCのタイトル奪取を狙う。
「乗った経験がある馬が当たったのでチャンスはあると思います。重賞3連勝の勢いで優勝できるように頑張ります」
キングオブキングス 吉村智洋騎手
吉村智洋騎手は3大会連続3回目の出場。猛者が揃う兵庫で6年連続兵庫リーディングを獲得。去年は自身3度目の全国リーディングに輝いている。今年5月に地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップを制し、8月末にJRA札幌競馬場で行われたWASJに地方競馬代表として出場した。数々の勲章を手中におさめた『キングオブキングス』がGJCの頂点を目指す。
「隙が無い騎手が揃っていて楽しいレースになると思います。トップを目指して一生懸命頑張ります」
伝説ふたたび 小牧太騎手
今年8月にJRAから兵庫に戻ってきた小牧太騎手が11大会ぶり14回目の選出。中央・地方を含めての重賞109勝を挙げている兵庫のレジェンドだ。復帰初日の初戦で勝利を挙げるなど洗練された騎乗技術を披露している。GJCは過去に準優勝1回、3位が3回とまだ頂点に立っていない。『新たな伝説』始まりの年に大会初制覇なるか?
「素晴らしい騎手が集まりますし、武豊騎手とまた一緒乗れるのも嬉しいですね。優勝したらヤラセになっちゃうかもしれないので2位を目指します」と、ファンの笑いを誘うコメントを残した。
騎手リーディング獲得経験がある兵庫の4枚看板。毎年地元で行われる騎手招待競走に向けて静かに闘志を燃やす。
決戦直前の検量前
中央、地方他地区の騎手達が検量前に現れたのは12時頃。数々の名勝負を演じてきた騎手の登場で現場は独特な緊張感が漂う。
検量で作業をしていたルーキーの塩津璃菜騎手は「オーラが凄いですね。普段調教で跨っている馬に武豊騎手が乗るのでどう乗るのか楽しみです」と、名手の手腕に期待していた。
今年デビューの新庄騎手、塩津騎手、高橋騎手、土方騎手は1年前の9月はまだ騎手候補生だった。競馬場実習をしていた時期にGJCが開催されて武豊騎手と記念撮影をしていた。
「あれから1年なんですか?時の経過が早いですね」と、土方颯太騎手。デビュー後に大きな怪我を負ったが、復帰してからも順調に勝ち鞍を挙げている。
「デビューしてあらためて騎手の大変さを痛感します。トップ騎手がどういうレースをするのか楽しみです。勉強させていただきます」と、目を輝かせていた。
ゴールデンジョッキーカップ出場騎手達は騎手紹介式前に検量で前検量を行っていた。早めに作業を終えた騎手は準備体操を始めたり、久しぶりに再会した騎手に挨拶をするなど空き時間を有意義に過ごす。
そこにはスペシャルウィークの勝負服姿の武豊騎手と小牧太騎手の姿があった。お互い再会を楽しみにしていただけに会話が弾む。後に2ショット撮影を実施した。名手が肩を並べるシーンは取材関係者だけでなく、近くにいた騎手や厩舎関係者も笑顔にさせた。
直前のレースに乗っていた兵庫の騎手も準備を終えて合流すると、暫くして騎手紹介式の開始時刻を迎える。出場騎手達が続々と西ウイナーズサークルに姿を現すとファンから大きな声援が飛んだ。
出場騎手
今年はJRAから武豊騎手、岩田康誠騎手、戸崎圭太騎手の3名が参戦。武豊騎手は去年に続いて1998年に日本ダービーをスペシャルウィークで初優勝した時に着ていた紫と白の勝負服で出場。岩田康誠騎手、戸崎圭太騎手は両者ともに地方所属時に身に着けていた騎手服での参戦となった。
今年もスペシャルウィークの勝負服で登場した前回覇者の武豊騎手は紹介式で「アレンパできるように頑張ります」と宣言。ファンからどよめきと笑いが起きた。
兵庫県競馬出身の岩田康誠騎手は2大会ぶりの出場。「久々の園田で緊張しています。小牧さんと対戦出来るのも楽しみです」とにこやかな表情で意気込みを語った。
大井競馬出身の戸崎圭太騎手は「結果で応えられるように頑張ります」と2013年以来の優勝を目指す。
地方他地区からは岩手の山本聡哉騎手、船橋の森泰斗騎手、大井の笹川翼騎手。高知からは2年連続で総合3位の赤岡修次騎手と宮川実騎手が出場した。
2度目の出場「みちのく」の仕事人 山本聡哉騎手
「第29回大会の覇者」2大会ぶりの参戦 森泰斗騎手
11年連続出場 今年こそ頂点へ 赤岡修次騎手
2年連続2度目の参戦 去年の地方競馬JCS覇者 宮川実騎手
今年、地方通算2000勝を達成した30歳の笹川翼騎手(大井)は初出場。デビューから4119日での到達はTCK所属騎手では最速の記録。今までの戸崎圭太騎手(現JRA所属)が持つ5086日を大きく更新。南関東を牽引する新ゴールデンジョッキーにお話を伺った。
「初めての出場ですが特に緊張はしていないです。凄い騎手達と一緒に乗れる貴重な機会なので良い経験になると思いますね。年間200勝にリーチ(9月16日時点)という事なので大舞台で決められるように頑張ります」と、引き締まった表情で紹介式へと向かっていった。
笹川騎手といえば「兵庫の英雄」イグナイターとのコンビで去年のJBCスプリントを制覇。兵庫勢初の交流G1制覇を決めたあの光景は記憶に新しい。南関東の看板騎手までに成長した若手のホープに期待が集まる。
◆GJC出場騎手 紹介式◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
騎手紹介式終了後に岩田康誠騎手、小牧太騎手の2ショット撮影が実施された。約20年前に兵庫で数々の名勝負を繰り広げていた騎手服が肩を並べる。当時を知るオールドファンにとってはたまらない光景だ。
検量に戻った12名の騎手が勝負師の顔に戻る。準備を終えた騎手が次々と下見所(パドック)へと歩みを進めていく。2024年ドリームレースの幕が開いた。
第1戦 ファイティングジョッキー賞
開幕カードの第1戦はスタンド前から発走する1230m戦。発馬地点から1角まで距離が短く、名手達がどう乗りこなすのか注目だ。
人気を集めたのは小牧太騎手が騎乗するリケアヴェール。タノムデホンマに跨る吉村智洋騎手が2番人気。サトノアヴァロンは岩田康誠騎手とのタッグで3番人気と支持を集めた。
最内枠から好スタートを決めたリケアヴェールがすんなりと先手を奪う。マルノミズキ、ハンバーグハマーと続きべラジオサキは好位インを追走。中団にはグラスヴィガー、ヴィクトリーナイト、エイシンドップラー、スマッシュヒットが続いた。後方にメイプルドレフォン、グルーヴィカグヤ。メイショウマサカリは11番手。サトノアヴァロンは最後方からのレースとなった。
マイペースの逃げに持ち込んだリケアヴェールは抜群の手応えのまま勝負どころを迎える。4角を通過するとリケアヴェールはさらに加速。後続との差を広げて独走状態。ゴール手前で小牧騎手が後ろを振り返る余裕をみせた。2着馬に6馬身差をつける圧勝でファイティングジョッキー賞を制した。
2着は後方10番手から追い上げたグルーヴィカグヤ。3着に好位内をロスなく立ち回ったタノムデホンマが入った。
1番人気の期待に応えた小牧太騎手が第1戦を勝利して20Pを獲得。
2着に入った川原正一騎手が15P、3着の吉村智洋騎手が13Pを獲得。兵庫所属騎手3名がワンツースリーを決めた。下原理騎手は8着で5Pを加えて次戦以降での巻き返しを誓う。
第1戦終了時点でのポイントは以下の通り。
開幕カードを勝利した小牧太騎手が西ウイナーズサークルに姿を現すと大歓声が起きた。
「発馬に不安がある馬と聞いていました。遅れたら腹を括って乗らなきゃいけないと思っていましたけど1番良いスタートでしたね。道中も手応えが良くて余裕がありました」と、ゲートを決めて期待に応えるところはさすが兵庫のレジェンド。11大会ぶりの出場となったGJC初制覇へ好スタートなった。
「周囲から『これってヤラセですか?』と言われました(笑)。とにかく総合2位を目指して頑張ります」と宣言してギャラリーを沸かせた。
2着に入った川原騎手は「展開が向いたね。最後まで脚を使ってくれた」と長く良い脚を使って馬券圏内に食い込んだ。兵庫の年長者2名が初戦で存在感を示した。
第2戦 エキサイティングジョッキー賞
エキサイティングジョッキー賞は1400m戦。スタート地点は4コーナーの奥でコーナー4つを回るコースだ。
第2戦は大会初出場の笹川翼騎手とコンビを組むヴィヴラガレットが1番人気。吉村智洋騎手が跨るべラジオサキが2番人気。武豊騎手が乗るエイユーマックスが3番人気で続く。エイユーマックスは永島太郎厩舎の管理馬。去年に続いて武豊騎手、永島太郎調教師のタッグとなった。
タンバッフェが主導権を握った。好位にはクロシンジュ、ホウショウラスティ、1番人気のヴィヴラガレットは4番手のインにつける。中団にはステラマリーナ、エイユーマックス、べラジオサキ、クリスタルニクスが追走。後方にはグリントスター、ショウリノマイ、テイムキッド。最後方でヤマタケメジャーが続いた。
前々でレースをしていたホウショウラスティが3角手前で後退して早々と脱落。ヴィヴラガレットは3番手インでじっと脚をためて前が空くのを待つ状況。中団にいたエイユーマックスが先に進出を開始。馬混みにいたべラジオサキは吉村騎手の大きいアクションに応えて加速を始める。この2頭が良い勢いのまま直線に入った。
逃げていたタンバッフェが後退するとクロシンジュが一旦先頭に立つ。直後にヴィヴラガレットがいたが伸びずに苦しんでいる。すると、馬場の真ん中を通ったべラジオサキの末脚が爆発。残り100m付近でクロシンジュを捕らえて勝利を掴んだ。吉村智洋騎手らしい力強い手綱裁きが炸裂した。2着争いは粘っていたクロシンジュをエイユーマックスがゴール手前で捕らえて競り勝った。人気のヴィヴラガレットは4着だった。
第2戦を制した吉村智洋騎手が20Pを獲得。GJC初優勝へ大きく前進。2着の武豊騎手が15P、3着の赤岡修次騎手が13Pを上積みした。
第2戦終了時点でのポイントは以下の通り。優勝争いは吉村智洋騎手が頭一つ抜け出した。しかし、最終戦の結果次第では7位の笹川翼騎手まで優勝の可能性が残される状況。まだまだ分からない。
2戦目も地元兵庫勢が勝利。吉村智洋騎手らしい大迫力のアクションが見られた。騎乗馬のべラジオサキは過去に2度騎乗経験(3着、2着)があった。
「スタートが決まるか決まらないか分からない馬なので、発馬だけ決めて終いに徹する競馬をしましたが良い結果に繋がりましたね。2戦を終えてここまでは順調にきていますね。ただ、どの騎手も隙が無いのでレースが楽しいレースばかりですし勉強になります」
百戦錬磨の騎手が揃った企画レースの雰囲気を楽しみながらも3着、1着でまとめポイント暫定首位に立った吉村騎手。初の総合優勝が見えてきた。
インタビューを終え検量前に戻ってくると「いや、そう甘くないですよ。次が山場ですね」と最終戦へ気を引き締めた。
初のGJC制覇を目指す赤岡修次騎手は2戦目の3着で優勝への望みを繋いだ。明るい表情のまま検量ルームの中へと入っていった。
4着に敗れた笹川翼騎手は関係者に声を掛けながら検量前に戻ってきた。思い通りのレースが出来なかったのか険しい表情。検量前のモニターでレースを振り返っていた。
第3戦 チャンピオンジョッキー賞
王者を決める最終戦は1700m戦。向正面のほぼ中央からの発走となる。スタートしてから最初の3角までは140m弱。コーナーを6回通過する舞台で騎手の腕が試されるコースだ。
第3戦も人気は割れ気味だったが武豊騎手とコンビを組むコンドリュールが1番人気となった。2番人気となった岩田康誠騎手は新子雅司厩舎のシフノスで上位を狙う。赤岡修次騎手は3番人気のサンライズラポールで悲願の大会初制覇を目指す。
トップスタートを切ったのはネネ。しかし、内からシフノスが押しながら先手を主張。徐々にリードを広げて単騎逃げに持ち込む。ネネは2番手で折り合う。サンライズスコール、アポロテネシー、オズモポリタンの順で続く。ハイレジリエンスは6番手を追走、中団にエコロカナワン、スマートウィザード、ヴァイスリヒト。後方にムーンガーデン、スマートウィザード。コンドリュールはスタート出負けで後方から2頭目。サトノグランが最後方で最初の3~4コーナーを通過した。
縦長の隊列でスタンド前を通過。逃げるシフノスが2番手以降に8馬身近くの差をつけて1角から2角へと向かっていく。速い流れのまま向正面に入った。自分のリズムで逃げるシフノスを早めに捕まえようと各ジョッキーの手が動き始める。序盤は後方にいたコンドリュールは楽な手応えでポジションを上げると、2周目3コーナーでは先頭との差は10馬身弱。徐々にスピードに乗ってグングン前との差を詰めていく。
思い切った逃げを見せたシフノスだったが4角手前で若干脚色が鈍り始める。好位でレースをしていたネネ、アポロテネシーがじわじわ接近。2馬身後ろからはサンライズスコール、コンドリュールが続き直線へと入った。
シフノスを捕らえて前に出たのはネネ、アポロテネシーの2頭。併せ馬の状態で競り合うところに外からコンドリュールが伸びてくる。鋭い伸び脚で前の2頭を抜き去ったコンドリュールが1着でゴール板を通過。武豊騎手の勝利に場内は拍手と歓声に包まれた。
2着争いはハナ差でネネが競り勝った。アポロテネシーは3着。大逃げで見せ場を作ったシフノスは4着。サンライズスコールは5着だった。
第3戦で勝利した武豊騎手が20Pを獲得。地元の下原理騎手は2着で15P。3着の山本聡哉騎手は13Pを加算。4着の岩田康誠騎手が11P、5着の赤岡修次騎手が10Pを加えた。
なお、小牧太騎手は7着で6P、川原正一騎手は9着で4P、第2戦終了時点でトップに立っていた吉村智洋騎手は10着で3Pを加算した。
レース終了後に検量前ではコンドリュールを管理する松浦聡志調教師が涙を浮かべながら武豊騎手を出迎えた。
「勝たなきゃいけないと思っていたので、勝った時は感動しましたよ。重賞を獲ったぐらい嬉しいですよ」と、興奮気味に取材に応えてくれた。
その後には武豊騎手とゼッケンを持っての記念撮影。日本競馬界の至宝とのタッグで勝利を挙げた記念すべき1日となった。
◆全3戦 優勝騎手インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
武豊騎手がウイナーズサークルに登場すると割れんばかりの歓声と拍手が起きた。
「ゲート内が煩くてスタートは出遅れました。ズブさは感じませんでしたし、道中は良い感じで走ってくれました。前は流れていましたし展開は向きましたね。最終コーナーを通過した時に勝てるかなと。良い馬に当たりましたね」
乗り難しい馬を乗りこなして最終戦を勝利した武豊騎手。今年も白と紫の勝負服が先頭でゴールを駆け抜けた。
最終結果
今年も上位拮抗となったゴールデンジョッキーカップ。混戦を制したのはJRAの武豊騎手。最終戦を勝って42ポイントとし、大会連覇を達成した。2戦目を勝利した吉村智洋騎手が36ポイントで惜しくも準優勝。3位争いは29ポイントで小牧太騎手、赤岡修次騎手が並んだが着順差で小牧太騎手が総合3位となった。
なお、川原正一騎手は6位。下原理騎手は10位で大会を終えた。
3位・小牧太騎手「これまで若い騎手と乗ってきていましたが豊さんが来てくれてホッとしましたね。名手が揃っていて隙が全く無く一つのミスが致命的になるので大事に乗りました。仕上げてくれた厩舎の方々に感謝したいですね」
2位・吉村智洋騎手「いやぁ~豊さんとは役者が違いました。僕の庭まで獲っていっちゃうとさすがに出る幕無くなっちゃいます。完敗ですね。優勝を狙っていましたが3戦目は豊さんが遥か前にいたので・・・。2位ですけど勝たなきゃ意味が無いですからね。来年こそは勝ちたいです」
1位・武豊騎手「タイガースも『アレンパ』してほしいですね。今年も全国から素晴らしい騎手が集まり、兵庫に移籍した小牧さんと久しぶりに一緒に乗れたので嬉しかったです。少し瘦せていて若返っていましたね。新聞で活躍は拝見しています。同世代なので気になる存在ですよ。(スペシャルウィークの勝負服)好きな勝負服なのでまたここでこの服で乗りたいです」
やはり「役者が違う!」。最終戦を豪快な差し切り勝ちを決めて総合優勝を決めた武豊騎手。阪神タイガースはセ・リーグ2連覇とはならなかったが、自身の「アレンパ」は見事有言実行。去年に続いて今年のGJCも大いに盛り上げてくれた。
◆GJC総合表彰式 &上位騎手インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
戦い終えた名手達
年に一度の祭典が終わった検量前は帰る準備を進める騎手の姿がみられた。公共交通機関が止まっていた影響で何名かの騎手は大急ぎで検量を後にした。
荷物をまとめていた岩手・山本聡哉騎手は「2度目の参加でしたが楽しかったです。3戦目は良いレースが出来たので良かったですね。また選ばれるように頑張ります」と、今年も岩手リーディング首位を走る「みちのく」の名手が笑顔で競馬場を後にした。
着順差で惜しくも4位となった赤岡修次騎手は「あと1つ?4位か~」と、悔しそうな表情を浮かべた。しかし、その後に行われた兵庫ジュベナイルカップをラピドフィオーレで勝利。ゴールデンジョッキーカップの鬱憤を重賞の舞台で晴らすところはさすが高知の仕事人だ。
下原理騎手からは「よかったね。これがメインだったんじゃないの?」と声を掛けられていた。
今回で22回目の出場となった川原正一騎手は「とりあえず見せ場は作れたかな。また参加できるように頑張ります」と、ベテラン健在ぶりをアピールした。
総合10位の下原理騎手は「8Rの馬はチャンスがあると思っていたんだけど、結果が出なくてショックでしたね。思い通りに行かないです。メインはあの感じなら行けるかなと思った瞬間、外から1頭凄い脚できましたね。『世界の武豊』恐るべしです。今年は不完全燃焼だったので来年こそ頑張りたい」と、悔しさを滲ませながら大会を振り返ってくれた。
過去最高の2位フィニッシュの吉村智洋騎手は「2位、3位じゃ意味ないんですよね。やっぱり1位じゃないとね。来年こそトップになれるように頑張ります」と、満足していない様子だった。来年は自身の「庭」でのGJC制覇に燃える。
総合3位の小牧太騎手は「とりあえず1つ勝てて良かったです。ただ、2戦目は道中の手応えが良かったけど、勝負どころで思ったほど伸びなくて・・・。2位は死守したかったね。こういう良いレースをして園田競馬がもっと人気になるようになったらいいね」と、11大会ぶりに参加したGJCを振り返った。
平成生まれのゴールデンジョッキーが登場した31回目のゴールデンジョッキーカップだが、『日本の名手』武豊騎手がアレンパを決めて幕を閉じた。優勝には届かなかったが兵庫勢4名とも馬券圏内入る活躍をみせた。吉村騎手と小牧騎手が表彰台に上がり兵庫の競馬を全国のファンにアピールした。来年リベンジを誓う騎手達だが、晴れ舞台に立つには兵庫の中でも出場枠を争うことになる。次回のGJCはさらに熱い戦いが展開されることだろう。
文:鈴木セイヤ
写真:斎藤寿一
(※写真の一部は兵庫県競馬組合)