2023 白鷺賞 レポート

2023年02月02日(木)

姫路競馬の再開に合わせて復活し4年目を迎えた西日本交流の古馬重賞「白鷺賞」。

今年は、佐賀と笠松から2頭ずつ、高知から1頭の他地区馬5頭を加えた12頭で行われた。

2020,2021年の2年連続年度代表馬に輝いたジンギは、昨春に白鷺賞・兵庫大賞典・六甲盃と重賞3勝を挙げたが、秋には兵庫に新加入したラッキードリームに連敗し、年度代表馬の座を明け渡すこととなった。明け7歳となった2023年、王座復権を狙って今年も白鷺賞からの始動。史上初の白鷺賞三連覇をかけて出走した。

そのジンギの前に大きく立ちはだかったのが、佐賀からの遠征馬ヒストリーメイカー。JRAから佐賀に移籍し、地方移籍初戦を姫路で迎えることとなった。

JRA時代は重賞勝利はなかったものの、G32着4回の成績は目を見張るものがあり、JRA最後のレースとなったカノープスSも2着に好走。大きく成績を落とした中での地方転出ではないことに加え、のちに東京大賞典、川崎記念とG1→Jpn1を連勝することになるウシュバテソーロと差のないレースをしていたことも注目を集めた。

ヒストリーメイカーが単勝1.6倍に対しジンギが1.9倍。3番人気のエイシンナセルは大きく離れた21.7倍と、完全に2強ムード。

兵庫重賞で2頭が単勝1倍台というのは、2013年兵庫ジュニアグランプリ(スザク1.8倍で6着、ニシケンモノノフ1.9倍で1着)以来、約9年ぶりのことだった。

園田金盃は大きな出遅れが影響して2着に敗れたジンギだが、本来のジンギらしく今回は好スタートを決めた。すんなりと好位3番手にポジションに収まると、その背後に忍び寄ったのはヒストリーメイカーだった。ジンギの真後ろにつける徹底マークの態勢を取った。

1周目スタンド前でジンギの内に進路を取ったヒストリーメイカーは、向正面入口から先に動き、ジンギを一気に内から抜いて先頭へ。負けじとジンギも動き、残り600m標識で早くも二強が抜け出す展開。中団にいたグリードパルフェ(高知)もこの2頭の後ろから早々と3番手に進出して直線を迎えた。

内のヒストリーメイカーを1馬身差で外から追うジンギ。直線230mを一杯に使った追い比べの中で、徐々にジンギが詰め寄り、最後に並びかけたところがゴール。

残り50mではジンギが差し切る勢いにも見えたが、並ばれたところからヒストリーメイカーももうひと踏ん張りした。アタマ差ジンギの追い上げを振り切ったヒストリーメイカーが地方移籍初戦で悲願の重賞初制覇を果たした。園田金盃に続きこの白鷺賞もジンギは三連覇の夢破れてしまったが、元JRAの強豪馬相手にさすがはジンギという走りを見せてくれた。

グリードパルフェ(高知)もこの2頭に食らいついて3/4馬身差3着なのだから、東京ダービー4着馬、やはり力はある。

2020年に復活した白鷺賞。復活4年目にして他地区の馬が初めて優勝。ヒストリーメイカーにとって9歳にして嬉しい重賞初制覇。

獲得タイトル

2023 白鷺賞

佐賀の石川慎将騎手は重賞21勝目。佐賀以外の他地区での重賞制覇は初めて。
姫路初騎乗で重賞を勝利して見せた。
また、この勝利は地方通算999勝目で1000勝のメモリアルに王手をかける勝利ともなった。

手島勝利厩舎は兵庫重賞2勝目。
2014年の園田FCスプリントをエスワンプリンスで制して以来の勝利だった。

出走馬

1番  エイシンアンヴァル  永井孝典騎手
2番 (笠)ナラ  深澤杏花騎手
3番 メイプルブラザー  鴨宮祥行騎手
4番 エイシンナセル 吉村智洋騎手
5番 (佐)ヒストリーメイカー 石川慎将騎手
6番 ユウキラフェール 杉浦健太騎手
7番 (笠)ミスティネイル 松本剛志騎手
8番 エイシンダンシャク 大山龍太郎騎手
9番 ジンギ 田中学騎手
10番 (高)グリードパルフェ 赤岡修次騎手
11番 アワジノサクラ 廣瀬航騎手
12番  (佐) シャンパンクーペ 山田義貴騎手

レース

気温は6℃台。大寒波が訪れた前週ほどの寒さではないが、冷たい空気に包まれる中、馬場状態「良」でスタートが切られた。

スタート
ほぼ横一線。5ヒストリーメイカーが若干出負け加減見えたが大きな影響はなし。前走大きく出遅れた9ジンギも今回はスタートを決めた。

1周目向正面
9ジンギがダッシュ良く先頭に立ちかけるが、内から気合いを付けられた1エイシンアンヴァルが出ていく。さらに3メイプルブラザーも促されて前を目指す。JRA時代は差しに構えるレースが多かった5ヒストリーメイカーは巻き返して好位へ。9ジンギの真後ろのポジションを取った。

1周目ホームストレート
1エイシンアンヴァルが後続を4馬身離すやや大逃げの形。3番手に9ジンギで、その内にコースを取った5ヒストリーメイカーが4番手。その外に8エイシンダンシャク。2ナラ、4エイシンナセル、10グリードパルフェが中団。

2周目1~2コーナー
後方はバラけて、12シャンパンクーペ、引退レースの6ユウキラフェール、11アワジノサクラ、7ミスティネイルと続いた。馬群全長は16~7馬身で縦長の展開に。

2周目向正面
向正面に出て残り800m標識を通過したところから一気に5ヒストリーメイカーが動きを見せ、9ジンギを内から抜いていく。そして加速した勢いそのままに残り600mで先頭に立つ。9ジンギも仕掛けられて1馬身差で追っていく。

2周目3~4コーナー
早目先頭の5ヒストリーメイカーについていく9ジンギ。その2馬身後方、10グリードパルフェが3番手に押し上げ、4エイシンナセルと8エイシンダンシャクが4,5番手。

最後の直線①
残り200m、各馬深い内を空けて、馬場の真ん中より外での追い比べ。9ジンギが5ヒストリーメイカーに一歩ずつ迫る。

最後の直線②
粘る5ヒストリーメイカーにジワジワと詰め寄る9ジンギ。10グリードパルフェも差を詰め、11歳馬4エイシンナセルも追い上げる。

最後の直線③
残り50m、9ジンギがぐいっと伸びて5ヒストリメイカーを捉えそうな勢いを見せる。

最後の直線④
ゴール直前、9ジンギに並ばれた5ヒストリーメイカーがもうひと伸びを見せる。見ごたえのある激しい追い比べに。

佐賀の5ヒストリーメイカーがわずかにアタマ差、9ジンギの追い上げを振り切る形で優勝。佐賀への移籍初戦で重賞初制覇を飾った。兵庫生え抜き9ジンギは三連覇ならず、今年は2着。3着に3/4馬身差まで差を詰めていた高知の10グリードパルフェが入った。

鞍上の石川慎将騎手は姫路競馬場初騎乗だったが、見事ヒストリーメイカーを勝利に導いた。

「結果が出てすごく安心していますし、嬉しいです」と重賞21勝目にして、遠征では自身初となる重賞制覇を喜んだ。

「(今の姫路は)外目を通るレースばかりだったし、(地元の)ジョッキーに訊いてもみんな外が有利ということだったが、それを意識しながら乗りすぎてもいけないな」とレース前は色々と考えたという。

そんな中でも、「やっぱり力を信じて乗ろう」と腹を括り、「ジンギだけを見てレースできれば」という思い描いていた理想の展開に持ち込めたことを勝因に挙げた。

このレースのハイライトは2周目向正面入口での仕掛けだろう。

向正面に入った瞬間にメイプルブラザーの内に進路を取った石川騎手が早くもヒストリーメイカーを促してスピードアップ。ジンギよりも先に仕掛けて、先手を打つ競馬をした。

「もう学さん(田中学騎手)も自分が動くのを待っていた感じだったので、向こうの思うようにしたくなかった。『自分の馬の方が強いんだ』と切り替えて、早目に自分から動こうと思って内を選んで空いているところから行きました」と石川騎手は振り返ったが、仕掛けられた瞬間にしっかり反応してスッと動けたヒストリーメイカーもさすがだった。人馬共にお見事とという他ない。

直線に向いてマッチレースとはなったが、「抜け出してからちょっと遊ぶような感じだったので、何か一頭来てくれたらなと思っていた」という石川騎手。

「ジンギが来てもう一回スイッチ入ってくれたんで、安心してゴールまで追えました。どこまで行っても交わされず、あのままだったかな」とアタマ差という着差以上に余裕もあったとのことだが、「さすがにジンギも強いなと思いました」と名勝負を作り出した好敵手も労った。

石川慎将騎手 優勝インタビュー
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

「西日本の大将格であるジンギとやって勝てて自信になりました、佐賀の代表として全国的に有名な馬になれるよう頑張っていきたいです。自分が子供の時からお世話になっている先生と子供の頃から一緒にいた厩務員さんとで、すごく思い入れのある中、重賞に挑みました。1戦目で勝てたことはすごく嬉しかったですし、これからまたこのチームで大きい所を取れるよう頑張りたい」と、様々な想いを背負っての重賞制覇だったとのことだ。

白鷺賞で地方通算999勝目となりメモリアルの1000勝に王手をかけたが、「今週末佐賀でスムーズに1000勝挙げられるよう」との言葉の通り、土曜最初の騎乗でいきなりメモリアルVを決めたのだから有言実行、さすがである。

総評

見事に重賞初制覇を果たしたヒストリーメイカー。管理する手島師は「これほどの馬を預かった以上負けられないと思っていたので、勝ててホッとしました」とコメント。

次走はまだ未定とのことだが、地元佐賀で3/12(日)に行われるはがくれ大賞典が視野に入る。
はがくれ大賞典は、交流戦となって以降9年間で兵庫勢が7勝もしている兵庫勢には相性抜群のレース。
(14,15エーシンクリアー、16サウスウインド、18,19,21,22エイシンニシパ)

兵庫勢に蹂躙されてきた佐賀の看板レース。佐賀勢にとっては忸怩たる思いがあるだろう。

今年は“佐賀の”ヒストリーメイカーが地元の期待を背負って、堂々と兵庫勢を迎え撃つことになる可能性が高い。

過去4勝のエイシンニシパは故障で離脱中の今年、兵庫からどの馬がヒストリーメイカーに挑戦するのかも含めて楽しみにしたい。


そして、2着に敗れたジンギの次走は?

ここ2年同様に名古屋大賞典(Jpn3)を目指すのか、あるいはこれまた三連覇がかかる兵庫大賞典に向け、今年は別のローテーションとなるのか。

ロードバクシンの持つ兵庫生え抜き馬の重賞最多勝記録(12勝)に並ぶのはどの舞台か。

2/9(木)の佐賀記念(Jpn3)に挑戦するラッキードリームとの再戦に向け、引き続き7歳となったジンギの走りにも注目だ。

写真:齋藤寿一
文:三宅きみひと

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