2023 兵庫クイーンセレクション レポート

2023年01月26日(木)

重賞『第24回兵庫クイーンセレクション』(姫路1400m)

3歳牝馬限定の重賞競走「兵庫クイーンセレクション」、姫路競馬場に舞台を移して今年で3年目。

過去にはマンボビーン、トーコーニーケ、トーコーヴィーナス、ステラモナークなど、兵庫で活躍した名牝が制している出世レース。昨年に続き地元馬のみで争われた。

園田ジュニアカップの勝ち馬、スマイルミーシャや同レース3着馬のヒメツルイチモンジは不在。春の兵庫クラシック戦線、またはグランダムジャパン3歳シーズンを目指したい精鋭10頭が顔を揃えた。

1番人気は、単勝2.4倍でサラキャサリン。道営から転入3戦目。転入初戦は逃げ切りで9馬身差の完勝。前走は2着だったが3着馬とは6馬身差をつけていた。昨年6月の道営デビューから9戦続けて3着以内と安定した走りを続けている。

2番人気は、兵庫生え抜き馬のイケノシイチャンで単勝2.6倍。園田プリンセスカップは見せ場たっぷりの4着。雪が舞う中行われた前走のフォーマルハウト賞(佐賀)で初重賞制覇を飾る。高馬厩舎に初タイトルをプレゼントした。

3番人気は、単勝4.4倍のエイシンレゲンダ。園田プリンセスカップ6着後に兵庫へ移籍。転入初戦のオープン特別は逃げ切り勝ち。園田プリンセスカップで敗れたアドワンにリベンジを果たす。続く2歳特別も制し3連勝で重賞初制覇を目指す。

4番人気は、マルグリッドで単勝7.3倍。道営からの移籍初戦は兵庫若駒賞勝ち馬のべラジオソノダラブ、兵庫ジュベナイルカップ勝ち馬のアルザードを破り認定戦勝利。デビューから7戦全て4着以内と堅実な走りが光る。

スタートは最内枠のサラキャサリンがトップスタートを切るとすんなり先手を奪った。隣の馬よりも1馬身以上前に出ると少しずつ馬場の真ん中へ進路を取る。過去2走とも逃げているエイシンレゲンダは2番手。イケノシイチャンは五分の発馬から好位3番手につける。マルグリットは前回に続き発馬で出負けし中団6番手で脚を溜める。

主導権を握ったサラキャサリンは道中で力むこと無く気分良く逃げる。向正面から少しずつ後続との差を広げる。残り600m付近からイケノシイチャン騎乗の吉村智洋騎手が気合を入れながら進出を始める。マルグリットも中団から徐々に前との差を詰めるが、エイシンレゲンダは3角過ぎから後退し脱落。イケノシイチャン、マルグリットの2頭が逃げるサラキャサリンを追撃し直線へ。

自分のペースを守ったサラキャサリンの脚色は最後まで衰えなかった。イケノシイチャンとマルグリットの追い上げを封じ重賞初制覇を飾った。

サラキャサリンの背中を追い掛けた二頭の争いはマルグリットが内から伸びて2着。イケノシイチャンは直線で一杯になり3着だった。

エイシンレゲンダは上位3頭とは離されたが4着は確保した。

兵庫クイーンセレクション

サラキャサリンは重賞初挑戦で初制覇。
エスポワールシチー産駒は同レース2勝目。2020年のステラモナーク以来3年ぶりの勝利。

獲得タイトル

2023 兵庫クイーンセレクション

松木大地騎手はデビュー9年目で嬉しい重賞初制覇。
2015年4月に高知競馬でデビュー。兵庫移籍5年目で初タイトル獲得。

新井隆太厩舎は、重賞15勝目。
重賞勝利は2021年の兵庫ユースカップ(サラコナン)以来。
兵庫クイーンセレクションは初制覇。

出走馬

1 サラキャサリン  松木大地騎手 
2 ジョイブラック 広瀬航騎手 
3 アイガットユー 井上幹太騎手
4 フェイスナイン 鴨宮祥行騎手 
5 マルグリット 下原理騎手 
6 クールフレア  大山真吾騎手
7 イケノシイチャン  吉村智洋騎手
8 ピーチクパーチク  竹村達也騎手 
9 エイシンレゲンダ  田中学騎手
10 レスプレンドール  永井孝典騎手 

レース

10年に一度の大寒波が日本列島を襲った。姫路競馬場は火曜日の夕方から大雪に見舞われた。

水曜日の開催は降雪の影響で中止。金曜日に代替開催が行われることとなったが、開催に向けて関係者による除雪作業、馬場整備が行われ、重賞当日の木曜日はレースを実施することができた。

木曜日も雪が降る時間帯もあったがレースへの影響は無かった。気温は上がらず日中でも3℃前後。

開幕週に続き深い内側を避けながらのレースが続く。内枠に入った馬達は苦戦を強いられていた。

スタート
スタートは1サラキャサリンがトップスタート。大きな出遅れはないが5マルグリッドは若干出負けした。

スタンド前〜
好発から徐々に進路を外へと持ち出す1サラキャサリンが先手を奪う。9エイシンレゲンダ、10レスプレンドールも外から前へ進出。7イケノシイチャンも位置を取りに行く。

ゴール板~1コーナー
5番手付近は大集団に。8ピーチクパーチク、2ジョイブラック。5マルグリッドは馬群の真ん中から少しずつ位置を押し上げる。後方に4フェイスナイン、6クールフレア、3アイガットユーが続く。

1~2コーナー
理想通り主導権を握った1サラキャサリン。よどみない流れで自分の展開に持ち込む。ただ後続は離されず先頭から最後方まで10馬身圏内で向正面へ向かっていく。

向正面
逃げる1サラキャサリンに対して、7イケノシイチャン騎乗の吉村騎手が鞭で気合いを入れ始める。5マルグリッドも下原騎手が促しながら先行集団との差を詰める。

3~4コーナー中間
9エイシンレゲンダの脚色が鈍り、7イケノシイチャンが内から抜き去り2番手に浮上。5マルグリッドも続く。

4コーナー
手応えに余裕がある1サラキャサリン。背後に迫る7イケノシイチャン。5マルグリッドはインから9エイシンレゲンダを捕らえ3番手に浮上。9エイシンレゲンダは遅れを取る。

最後の直線①
残り200m、逃げる 1サラキャサリンを7イケノシイチャン、5マルグリッドの2頭が追う。前3頭の争いとなる。

最後の直線②
気分よく逃げる1サラキャサリンが止まらない。5マルグリッド、7イケノシイチャンも懸命に追うが中々差が詰まらず2着争いまで。

ゴール手前でまた差を広げる1サラキャサリン。勝利を確信した松木大地騎手が右手で渾身のガッツポーズ。3馬身差の快勝で重賞初制覇を果たした。2着は内から伸びた5マルグリッド。課題を残しながらも賞金上積みに成功した。3着は7イケノシイチャン、早めに逃げ馬を捕まえに行くが最後は力尽きた。

今年の姫路開催は1月17日から始まったが内枠勢が苦しんだ。スタート後は深い内側を通ることになり行き脚がつかない。開幕週を終えた時点で1枠は僅か1勝だった。

松木大地騎手コメント

「枠が1番になったときは笑うしかなかった。逆にやる事は一つしかないと割り切れたので馬を信じて邪魔をしないように気を付けました。今回は良いスタートが切れてスムーズに外へ持ち出せた。馬の持ち味を活かすために3角から早めに動いていく形になりました。直線は長く感じましたね。」

サラキャサリンは重賞初挑戦初制覇。昨年6月にホッカイドウ競馬でデビューしてから10戦連続3着以内。逃げる競馬だけでなく、控える競馬でも崩れていない。

華麗なる逃走劇を披露したサラキャサリンは一息入れて春に備える。

今年の兵庫3歳牝馬は非常に層が厚い。

園田ジュニアカップを制したスマイルミーシャ、3戦2勝のヒメツルイチモンジ。マルグリッド、イケノシイチャンに重賞好走歴のあるカタラもいる。春は兵庫三冠クラシックにグランダムジャパン2023の3歳シーズンもあり、各陣営がどの路線に進むのか?

3歳重賞戦線が今から楽しみだ。

姫路競馬場のウイナーズサークルは今年の開催前にゴール前へ移設された。

リニューアルされて最初のインタビューは松木大地騎手。
第一声は「うれしいです!!」

デビュー9年目での初重賞制覇。
2015年4月に高知競馬でデビュー。兵庫へ移籍して5年目で初タイトル獲得。

普段気持ちを表に出さないタイプの松木騎手。
だが初重賞タイトル獲得となると溢れる気持ちが爆発。
ゴールでは大きなガッツポーズが飛び出した。
雪が残る姫路に緑の大地が躍動した。

「デビューしてからの下積み時代の記憶が1つずつ蘇った。高知の雑賀正光先生に厳しく育てて頂き、兄弟子の永森騎手、岡村騎手の背中を見てきました。兵庫へ移籍してから雑賀伸一郎先生をはじめ、先輩騎手、調教師の先生、厩務員さんに温かく迎えてもらい親切に教えてもらえた結果だと思っています。」

思うように勝てない時期の事を思い出すと目に涙を浮かべた。

松木大地騎手 優勝インタビュー
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

2018年のヤングジョッキーズシリーズはファイナルラウンド3位。
2020年には年間60勝を挙げ、自身のキャリアハイを更新した。
だが、ここ2年は勝ち鞍が伸び悩んでいた。
苦しい中でも一つ一つ、コツコツ積み上げた努力が結果となって表れた。

「ここ数年父親が体調を崩していた事もあり、どうしてもタイトルを獲りたかった。」
現地に駆け付けていたご両親の前で重賞制覇を成し遂げた。レース後は親子で抱き合って喜んだ。

「高知も勢いがありますけど、園田・姫路競馬も日本一熱いレースをしていると思うので、沢山馬券を買って応援をお願いします。」

競馬に対して真面目に取り組んできた努力が報われた瞬間だった。
一皮むけた松木大地騎手のさらなる飛躍を期待したい。

写真:齋藤寿一
文:鈴木セイヤ

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