2024 兵庫大賞典 レポート

2024年05月02日(木)

1964年に創設された兵庫県競馬の伝統重賞「兵庫大賞典」。60回目を迎える今年から距離が1400mに短縮され、春の短距離王者を決める戦いに生まれ変わった。兵庫で短距離を主戦場としている馬達が活躍できる場が新たに設けられ、スピードに秀でる12頭が兵庫県のビッグタイトルに挑む。

人気はタイガーインディ、ドンカポノの2頭に支持が集まった。

1番人気(単勝1.7倍)のタイガーインディは2走前の兵庫ウインターカップで重賞初制覇。道中5番手追走から気分良くレースを進めると勝負所から一気に浮上し、後続に5馬身差をつける圧勝だった。前走の黒船賞(Jpn3・高知)は馬体を大幅に減らしながらも自身の走りを披露し強豪相手に3着と奮闘した。以降も順調に調整が進められて輸送で減った馬体も回復。万全の状態で大一番を迎える。


2番人気(単勝3.0倍)に推されたのはドンカポノ。中央のダートで3勝を挙げて今春に兵庫へ移籍。初戦は1870mでラッキードリームと激突したがコンマ1秒差の2着と高いパフォーマンスを披露した。距離を短縮した前回は2番手から抜け出しての快勝。エンジンが掛かってからの鋭い伸びを重賞の舞台でも発揮出来るかがポイントになる。

オープン特別で重斤量を背負いながらも結果を残しているハナブサが3番人気(単勝8.5倍)。吉村智洋騎手と初コンビで2年ぶりの重賞タイトルを目指す。

安定感が魅力のサンロアノークは4番人気(単勝11.3倍)で続いた。

出走馬

1番  サラコナン 大山真吾騎手
2番 サンセットベリー 竹村達也騎手
3番 ナムラタタ 鴨宮祥行騎手
4番 オーバーディリバー (高)赤岡修次騎手
5番 ドンカポノ 下原理騎手
6番 テーオーターナー  大柿一真騎手
7番 ケンジーフェイス 田野豊三騎手
8番 ハナブサ 吉村智洋騎手
9番 タイガーインディ 広瀬航騎手
10番 エイシンギアアップ 永井孝典騎手
11番 ディアタイザン 杉浦健太騎手
12番 サンロアノーク (金)吉原寛人騎手

レース

スタート

スタンド前

1コーナー手前

2コーナー

向正面

3コーナー

3〜4コーナー

4コーナー

最後の直線①

最後の直線

最後の直線

ゴールイン

今年のゴールデンウィークレースは4月29日の月曜日からの4日間開催。兵庫大賞典当日は芦毛限定競走の「芦毛だよ!全員集合」が行われるなど大いに賑わった。素晴らしい天気の中で行われる熱戦を3300人を超えるギャラリーが見守った。

全馬すんなりとゲートに収まりスタートが切られた。好発のディアタイザンが11番から勢いをつけて主導権を握った。その直後にはケンジーフェイス。タイガーインディが外に切り替えて3番手追走。サラコナン、ドンカポノ、サンロアノークが先行集団の後ろ。中団にはナムラタタがインコース。テーオーターナーが差がなく追走。伸びあがるようなスタートとなったハナブサは9番手。後方はオーバーディリバー、エイシンギアアップ。4馬身離れてサンセットベリーが最後方で続く。サンセットベリーを除くと残りの11頭は8馬身圏内で1コーナーを通過した。

ディアタイザンが先頭でバックストレートに入るが、ケンジーフェイスが半馬身差で追走。タイガーインディは外の3番手で気分良く運ぶ。それをぴったりマークするドンカポノが4番手。直後にサンロアノーク、テーオーターナー。サラコナンは苦しくなり徐々に後退。ナムラタタはインをロスなく立ち回る。ハナブサも中団まで追い上げるが先頭から10馬身後方。後はオーバーディリバー、エイシンギアアップ、離れてサンセットベリーが追走して3コーナーの坂を上り切った。

残り400m付近でタイガーインディがさらに加速。鞭が盛んに飛ぶディアタイザン、ケンジーフェイスを楽な手応えで抜き去ると4角手前で先頭。マークしていたドンカポノも3~4馬身後方から追い上げ態勢に入る。
その直後からは内からテーオーターナー、ナムラタタ、サンロアノーク、ハナブサもラストスパート。ケンジーフェイスは力尽きて先行集団から脱落。

直線に入るとさらにスピードが乗るタイガーインディ。後続との差をグングン広げて独走状態に入る。4馬身後方では逃げ粘るディアタイザンを残り100mでドンカポノが捕らえる。2番手に浮上したがタイガーインディの背中は遠い。外から伸びてきたナムラタタとの2着争いになる。

姫路で見せたあの豪脚を皐月の園田でも披露したタイガーインディ。兵庫ウインターカップ同様に2着馬と5馬身差をつける圧勝で人気に応えた。

ドンカポノはタイガーインディには離されたが2着を死守。頭差の3着はナムラタタが入った。ロスなく立ち回って4角付近で外へ切り替えるとじわじわ前との差を詰めた。

サンロアノークは4着、逃げて見せ場を作ったディアタイザンは5着。3番人気のハナブサは8着。終始外をまわる展開となり、本来の力を発揮できずに終わった。

タイガーインディは2月の兵庫ウインターカップに続き重賞2勝目を挙げた。

獲得タイトル

2024 兵庫ウインターカップ
2024 兵庫大賞典

◆広瀬航騎手は通算重賞6勝目。オーシンロクゼロで勝利した菊水賞に続き、今年の重賞3勝目となった。兵庫大賞典は初勝利。

◆保利良平厩舎は重賞6勝目。 2月の兵庫ウインターカップに続き、今年重賞2勝目。兵庫大賞典は初制覇。

◆広瀬航騎手 優勝インタビュー◆
 (そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)

後続に5馬身差をつける圧勝に広瀬航騎手は「緊張していたのが阿保らしいですね(笑)」と一言。兵庫伝統重賞で1番人気というプレッシャーはあったが、タイガーインディが本来の能力で期待に応えた。

「前回の黒船賞ぐらいの感触はありました。いつもと変わらずやる気満々でした」。高知遠征で減らしていた馬体も戻り、良い状態で大一番を迎えられた。

スタートを決めるとディアタイザンを行かせて外の3番手。理想のポジションを確保してレースを進めることができた。

「行く馬を行かせて折り合いをつけられる位置でレースをしてほしいと陣営に言われていましたが、ちょうどいいポジションにつけられましたね」

勝負所からエンジンが掛かると4角手前で先頭に立つと後続を突き放す一方。ライバルに強さを見せつけた一戦となった。

「内2頭がバテてきていたので一気に行きました。脚をためていても仕方ないので馬の力を信じて思い切って出ましたが強かったです。今後は大きい所(ダートグレード)を狙っていきたいですね」。地元馬同士では絶対に負けられないという重圧を跳ねのける快勝。今後に弾みをつける勝利となった。

保利良平厩舎の有力馬に騎乗する機会が多い広瀬騎手。「嬉しいですね。色んな馬を託して貰っているのでビッグタイトルをプレゼント出来て良かったです」。お世話になっている調教師に兵庫大賞典のタイトルをもたらした。

自身も初の兵庫大賞典制覇となったが「ここまで苦労してきたので、ちょっとぐらいいいことがあっても良いのかな?って思いますね」と笑みを浮かべて語った。長い下積み生活から這い上がり、2021年から3年連続で年間100勝を達成。同時に重賞タイトルを狙える馬への騎乗機会も増え、今年だけで重賞3勝をマーク。兵庫を代表するトップジョッキーの仲間入りを果たした広瀬騎手が相棒と共にさらに上のステージを目指す。

総評

表彰式後、保利良平調教師に話を聞いた。「今回は絶対の自信があった。枠も良くて状態は上がっていたので負けられないと思いました」と最大目標としていた舞台に向けて万全の仕上げで送り込んだ。
「出てからは広瀬君に任せる感じでしたが上手く乗ってくれました。レースは何が起こるか分かりませんが勝ってよかったです。力があるのは前回で分かっていたので安心しましたよ」とホッとした表情で振り返った。
強さをみせつけたタイガーインディ。今後は他地区への遠征を視野に入れている。
「今月23日のオグリキャップ記念(笠松)に登録しています。使う所が限られるので行けたら行きたいです。笠松ぐらいの距離なら輸送は大丈夫かなと」。

黒船賞の時は-12kg。輸送で馬体を減らしたが3着と奮闘した。大舞台へ挑むには輸送を克服しなければならない。
「とても敏感な馬なので減ってしまうのは仕方がないです。高知遠征はどれだけ馬体が減るか未知数だったので8分程度の仕上げでした。輸送という課題はあるが良い状態が続き充実しているので、大きい所を狙っていきたい」と、さらに上のステージを目指す。

これまでの兵庫は2月の兵庫ウインターカップが終わると9月の園田チャレンジカップまで1400m重賞が無く、短距離馬達は適距離を求めて他地区重賞へ遠征をしていた。

昨年から始まったダートレース革命の影響で、今年度は全国的に重賞レースの条件、重賞実施時期の変更など思い切った改革行われた。兵庫大賞典はこれまで春の中距離王者決定戦として行われてきたが、今回から距離が1400mに変更。短距離を得意とする馬が活躍できる場が新設されて兵庫短距離路線の一線級が揃った。昨年のJBCスプリントで交流G1制覇を成し遂げ、今春はドバイ国際競走に挑戦したイグナイターに続くダートグレード戦線で活躍する馬を輩出する一戦としてさらなる盛り上がりに期待したい。


 文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一 

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