2024 園田FCスプリント レポート
2024年06月13日(木)
今年で14回目を迎える820mの重賞「園田FCスプリント」。6年ぶりに佐賀も参戦可能となり、今年は佐賀、高知、兵庫の3地区交流となった。
来月18日に船橋競馬場で行われる1000m重賞「習志野きらっとスプリント」に向けての重要なステップ競走となる。
今回は佐賀から3頭、高知から2頭、兵庫から7頭が名乗りを上げてフルゲートで争う。1400m路線から電撃戦に初めて挑む馬もいて楽しみなメンバー構成となった。
1番人気は、佐賀から遠征のオールスマート(単勝2.5倍)。
今年2月に南関東から佐賀へ移籍。初戦は2着だったが、次戦から持ち前のスピードを駆使して勝利を積み重ねる。前走はオープンの900m戦で後続に6馬身差をつける圧勝。佐賀900mのレコードタイムに迫るタイムを記録した。長距離輸送、相手強化という課題はあるが、5連勝の勢いと前走内容をファンは評価した。
2番人気は地元兵庫のメイプルシスターで3.3倍。
去年は逃げ切りで園田FCスプリントを勝利。永井孝典騎手と共に初タイトルを獲得。次走の習志野きらっとスプリントは7着だったが、抜群のスタートを決めて2番手につける競馬で見せ場を作った。去年の大晦日に勝った後はワンターンのレースを求めて南関東へ移籍。再び兵庫に戻ってきての初戦は仕上がり途上だったが2着。前走後も順調に調整されていて連覇へ虎視眈々。
3番人気の単勝6.3倍は高知のダノンジャスティス。園田競馬場では重賞2勝(2022年園田チャレンジカップ、2023年兵庫ゴールドカップ)。園田巧者が今年も園田FCスプリントに参戦。これで4年連続の出走となる。過去は3、2、3着と全て馬券圏内。鞍上は3年前にダノングッドで勝利している畑中信司騎手。さらに理想の内枠が当たり侮れない存在だ。
単勝8.6倍の4番人気は820m初挑戦のガリバーストーム。
2歳時に無敗で兵庫若駒賞、園田ジュニアカップを制覇したが、以降は怪我で長期離脱を余儀なくされた。去年12月に復帰すると一歩ずつ階段を上がりオープン昇級。重賞の舞台は2年半ぶりとなる。持ち前のスピードで電撃戦にどこまで対応できるかがポイントになりそうだ。
以降は高知のイモータルスモーク、ルクスランページと人気が続く。
出走馬
レース
ゴールイン
6月の2週目は良い天気の中で開催が実施されたが気温が急上昇。連日30℃超の真夏日となった。重賞当日も実況席の気温は33℃に到達。カラッとした暑さの中、園田FCスプリントのファンファーレが場内に響く。
注目のスタートは1番人気のオールスマート、ダノンジャスティスの2頭が好スタートを切る。イモータルスモーク、ケンジーフェイス、サラコナンはダッシュがつかず遅れを取る。
スタート後は固まっていた先頭集団が徐々にばらけていく。外からスピードに乗るオールスマート、真ん中から二の脚が速いメイプルシスターが飛び出し2頭のハナ争いとなる。オールスマートが頭ひとつ前に出ていたがメイプルシスターも内から懸命に食らいつく。1列後ろにモーモーレッド、ロトヴィグラスの佐賀勢2頭。直後にダノンジャスティス、ルクスランページが追走。そこから2馬身半開いてイモータルスモーク、クリノイコライザーが中団につける。さらに2馬身後ろにガリバーストーム、ケンジーフェイス、マリター。サラコナンが最後尾で馬群全長15馬身ぐらいで3コーナーに向かう。
3コーナー手前からさらに加速したオールスマートがメイプルシスターとの差を広げる。3~4コーナー中間では4馬身近くの差をつける。2番手にいるメイプルシスターの後ろはダノンジャスティス、モーモーレッド、ロトヴィグラス。差がなくルクスランページ、イモータルスモーク、ケンジーフェイスが追走。ガリバーストームは激流の流れに対応出来ず後方に置かれる。
オールスマートが4~5馬身のリードを保って先頭で直線コースに入る。脚色は衰えないままゴールへと向かっていく。離れた2着争いはメイプルシスターの脚色が鈍ると内からルクスランページ、イモータルスモーク。外からダノンジャスティスがじわじわ伸びて激戦となった。
後続の争いを尻目に自分の競馬に徹した佐賀のオールスマートが逃げ切りで人気に応えた。重賞初出走とは思えない貫禄の走りで初タイトルを手に入れた。
3馬身差の2着は高知のイモータルスモークが競り勝って首差先着。スタートで出負けして中団からとなったが、上がり最速の末脚で次位は確保。適距離でない条件で力を示した。
3着は重賞初挑戦のルクスランページ。五分のスタートから前の集団につけると、インを立ち回り良い脚を使って地元最先着となった。他地区の強豪と戦った経験は秋以降の短距離重賞に繋がるはずだ。
4着にダノンジャスティス、820m初挑戦のケンジーフェイスが追い上げて5着。連覇を目指したメイプルシスターは6着。ガリバーストームは8着だった。
◆佐賀のオールスマートは8歳牡馬。重賞初挑戦で初制覇。佐賀勢は同レース3勝目、2018年のエイシンテキサス以来(高知のカイロスと1着同着)。
獲得タイトル
2024 園田FCスプリント
◆山下裕貴騎手は兵庫重賞初制覇。他地区での重賞制覇も初。同馬とは佐賀転入からコンビを組み7戦6勝、2着1回とここまでパーフェクト連対。
◆鮫島克也厩舎は兵庫の重賞は初制覇。騎手時代にエスワンプリンスで園田FCスプリント(2014年)を勝利。騎手、調教師でW制覇となった。2022年の開業以来、地元佐賀で重賞2勝をマークしていたが、他地区での重賞は初制覇。
◆山下裕貴騎手 優勝インタビュー◆
(そのだけいば・ひめじけいば 公式YouTubeより)
3地区の820m巧者が揃った一戦だったが、連勝の勢いに乗る佐賀のオールスマートが強者達を撃破。佐賀に来てから全戦で手綱を取る山下裕貴が勝利に導いた。
「初の遠征でしたが、いつも通りの感じで自分がスタートをミスしなければ大丈夫かな?と思っていました」と前走同様にスタートを決めて自分の展開に持ち込んだ。
前年覇者のメイプルシスターとの主導権争いを制するとコーナー手前からさらに加速した。
「自分の方が半馬身ぐらい出ていたので行こうと思っていました。3角から加速していく馬なので佐賀の時みたいなレースをしてくれました。リードはありましたが、メンバー強化で最後まで気を抜くことなく乗りました」。
園田の急コーナーでもぐんぐんスピードを上げると一時は後続に4馬身近くの差を広げていた。スピード自慢が揃う820mの電撃戦で中々見ることが出来ない光景だ。
「(オールスマートは)スピードがあって一生懸命走る馬です。年齢も年齢なのでこれ以上伸び代があるかはわかりませんが、まだまだ頑張ってくれると思います」と、キャリア57戦目で初重賞を掴んだ8歳馬「オールスマート」を評価した。遅咲きの星が佐賀に電撃王のタイトルベルトを持ち帰る。
総評
気温が上がり輸送での馬体減りが目立つ馬も多かったが、オールスマートは-3kgと微減にとどめた。
「輸送でのイレ込みはなかった。長距離移動を考慮して若干太めに仕上げたのが上手くいきました」と計算通り。輸送をクリアしてレースで能力を全発揮した。
「オールスマートは短い方が良いタイプなので園田FCスプリントを選択した。他地区との力関係も見たかったし、試してみたいと思っていました」と、園田遠征を選んだ理由も語ってくれた。
今年で8歳のオールスマートについては「来た時より馬に覇気が出てきた。乗り味も良い馬。(次走は)夏場に入るので何ともいえないが、状態を見てから考えていきたい」と、今後のレース選択も注目したい。
「高知に遠征した時は惨敗だったので、今回勝ててホッとしています。調教師としてこのレースを勝つことができて嬉しいですね」。
騎手時代は地方通算5054勝を挙げた佐賀の名ジョッキー。”キングシャーク”が調教師としても着実に勝ち星を積み上げている。
2024年に園田・姫路で行われた地方交流重賞は遠征馬の勝利が多く、今回の園田FCスプリントも6年ぶりに参戦が可能となった佐賀勢が勝利。兵庫勢は、上半期は他地区所属馬に屈する場面が多くみられた。ダート路線の革命や賞金増加もあり各地区で高素質馬がデビューして才能を発揮。中央の実績馬も地方に移って活躍するなど地方全体のレースレベルが上昇している。
しかし兵庫には、JBCスプリントを制覇しドバイ国際競走に挑戦したイグナイター、今年重賞3勝を挙げているタイガーインディなど、高いポテンシャルを持った馬も多く在籍している。
今年の前半は遠征馬に屈した分、下半期は地元兵庫勢の巻き返しに期待したい。
文:鈴木セイヤ
写真:齋藤寿一